オルキリア元ちきーた

長屋紳士録のオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

長屋紳士録(1947年製作の映画)
3.8
ウォルターサレス監督の「セントラルステーション」(1998)の間違いなく元になった作品。

1947年といえば、終戦の1945年の2年後に発表された作品。
戦後の混乱期、父親と生き別れになった少年を仕方なく預かった中年女性が、数日の触れ合いによって、人間としての「成長」を遂げる作品。
最後の「孤児に対する対応」への啓蒙メッセージは、時代としたら仕方ない気もするが
そこを抜きにしても、当時の「長屋」というコミュニティでの悲喜交々のやり取りと、それによって変化していく人間の「情」を切り取った「紳士録」であると思う。

前述した「セントラルステーション」でも、ヤサグレた中年女性のドーラが、孤児となったジョズエと「父俺探し」をしていく内に、人間としての尊厳とは何か?を感じ取っていく成長物語になっているが

こちらの作品の方が切なさは上かもしれない。

それと同時に、大人が子供に押し付ける理不尽な物言いや、大人の都合で振り回される子供の描写などは、この時代の作としてはかなり「子供目線」を意識していて、この時代にこれを作れる小津安二郎監督の視野の広さに感服する。

カメラワークや簡略化されたストーリーテリングも流石の流れ。
例えば、少年が寝る→翌朝布団が干してあるシーン
この二つのシーンだけで、少年が夜中にオネショをしてしまった、という分かりやすい流れを説明してのけてしまう。

この分かり易さが、ウォルターサレスやキアロスタミほか海外の映画監督の教科書的存在になった由縁の一つなのだろう。