しゃび

滝を見にいくのしゃびのレビュー・感想・評価

滝を見にいく(2014年製作の映画)
3.5
森は映画における、反則技級の優れたロケーションだと思う。

なにしろ、森の中で描けば全て絵になる。
森の中で絵になるものを描けば、名シーンの出来上がりだ。

ゴダールが代表作『気狂いピエロ』で、アンナ・カリーナとジャン=ポール・ベルモンドに踊らせたのが森であったことも。
『ワン・プラス・ワン』でレコーディング風景と対立させたのが、森と少女であったことも。

この事実と無関係ではないだろう。


『南極料理人』では際立たせていた個々のキャラクターを、本作ではふわっと遠巻きに描いたのは、森と御一行を際立たせてたかったからだと感じる。


沖田監督の食卓職人ぶりもちゃんと発揮されている。

食は関係性を育む。
関係性の変化のために、具体的なエピソードを設けなくても、一緒にご飯を食べただけで納得がいってしまう。

遭難→食→遊びという、森で関係性を育むには十分すぎるラインナップ。構成の時点ですでに勝ち確定の映画だと感じた。



【ネタバレ】



終わらせ方も絶妙だ。

トラクターという、労働の機械にしては、なんとも長閑な乗り物を使ってのクローズ。一行を街に戻すことなく、森の魔力をまとったまま終わらせてくれるので、現実に引き戻される感じがない。


悠々とした映画だけど撮影は大変だっただろうなぁ。
しゃび

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