森は映画における、反則技級の優れたロケーションだと思う。
なにしろ、森の中で描けば全て絵になる。
森の中で絵になるものを描けば、名シーンの出来上がりだ。
ゴダールが代表作『気狂いピエロ』で、アンナ・カリーナとジャン=ポール・ベルモンドに踊らせたのが森であったことも。
『ワン・プラス・ワン』でレコーディング風景と対立させたのが、森と少女であったことも。
この事実と無関係ではないだろう。
『南極料理人』では際立たせていた個々のキャラクターを、本作ではふわっと遠巻きに描いたのは、森と御一行を際立たせてたかったからだと感じる。
沖田監督の食卓職人ぶりもちゃんと発揮されている。
食は関係性を育む。
関係性の変化のために、具体的なエピソードを設けなくても、一緒にご飯を食べただけで納得がいってしまう。
遭難→食→遊びという、森で関係性を育むには十分すぎるラインナップ。構成の時点ですでに勝ち確定の映画だと感じた。
【ネタバレ】
終わらせ方も絶妙だ。
トラクターという、労働の機械にしては、なんとも長閑な乗り物を使ってのクローズ。一行を街に戻すことなく、森の魔力をまとったまま終わらせてくれるので、現実に引き戻される感じがない。
悠々とした映画だけど撮影は大変だっただろうなぁ。