『愛される者と呼ばれ 愛されてると感じること』
昨年度、賞レースを総ナメした作品。特筆すべきは、ヒッチコックの「ロープ」がよく挙げられるような、数日間をワンカット長回しのように描写する撮影・編集方法。撮影監督はアカデミー賞2回連続受賞「ゼロ・グラビティ」のエマニュエル・ルベツキ、ワンカット長回し編集にVFXや照明効果が加わり素晴らしい映像に。この映像を見るだけでも今作を劇場で観る価値があると感じました。
また、冒頭から流れるドラム音。ワンカット編集と相あまり映画全体に緊張感を生み出しています。
肝心の映画の内容ですが、基本的に登場人物の会話劇とジャンルで言うとコメディ。声を大にして『面白い』と言えない、というか冗長で『つまらない』と感じる方が多いのではないでしょうか…
しかし、この『つまらなさ』が中盤で爆発する。
これは、意味のある『つまらなさ』だと思いました。
個人的には、唯一アガったVFX全開で主人公の内なるバードマンが覚醒するシーン(予告編でもあります)
バードマンが観客にこう語ります。
『お前は大スターだ。やつらの退屈な人生を変えろ、驚かせ、笑わせ、チビらせろ。お前がやることは…まさにそれだよ!骨まで震わす大音響とスピード!やつらを見ろ。目が輝いてるぞ。みんなが大好きなのは血とアクション。しゃべくりまくる重苦しい芝居じゃない』
前半で出てくる実際の役者名。後半で出てくる所謂ブロックバスター大作のコスプレ。
1人の男が羽ばたくための、ワンスアゲインとして考えることができるかもしれませんが、今作が観客に、作り手に、ハリウッドの商業主義に伝えようとしているメッセージは明確でしょう。
配役や役者の経歴など何重にも作られたメタフィクションな点も興味深いですし
映画のラスト、文字通りバードマンの仮面(過去の栄光)を剥ぎ取り、羽ばたき自己に到達する主人公。映画が終わる呼吸感も最高でした。
あのVFXのシーンが無ければ、非常に危うい綱渡りに失敗していたような印象です。今作を見たら素直に「アベンジャーズ」を見られないような気がしますが、映画前に「ファンタスティック4」や「ミッションインポッシブル」の予告で興奮した自分に叩きつけられたモノは深かったです。
もちろん、万人には勧められませんが、映画ファンとしてはぜひ劇場で観たい一本でした。