SHIMABOO

マイ・インターンのSHIMABOOのレビュー・感想・評価

マイ・インターン(2015年製作の映画)
3.0
 デ・ニーロに諭されて早々に退場する飲んだくれの運ちゃんとか、デ・ニーロとの対比として出てきた不器用なばあさんとか、主役を立てる為「だけ」に意図的に配置された端役たちに、いたたまれない気持ちを抱いてしまった。アイツらにだってそれなりの人生を歩んできているはずで、離婚やら別離やら、あるいはこれからの人生の目標とか夢とかあるはずなのに、この映画にはそういう多様な人生を感じさせる奥行きが無い。「年取るのも結構悪いもんじゃないぜ」という新鮮な価値観を見せたのは素晴らしいと思うけれど、所詮はそれも新たなアメリカン・ドリームの一つでしかないのだなあと。てゆーか書いてて思ったんだけど、俺はつくづくそっちじゃなく「あっち側」の人間なのだなあと。うう、涙が…。<なぜ泣く!?

 ロバート・デ・ニーロはいわゆる仙人。完全に俗世間から上がっちゃってる人で、周辺でこそドラマは展開されるものの、デ・ニーロ自身に葛藤や衝突といったものは存在しない。監督の老人観がそうさせたのかもしれんが、よってこの主人公のじいさんは映画の始まりから終わりまで一貫して、人当たりのいい好々爺のままだ。それでどうなってるかというと、子綺麗なエピソードがいくつか並んで串刺しになってるだけという、全体の構成が弱い映画という印象が…実際観ているとき「これ死ぬまで話終わんねーじゃん」とか思っていたんだが、意外や意外、見事な落としどころで幕引きになっていたので、率直に巧いなあと感心した。

 ただまあそのエピソード毎が良くできているので、ナンシー・マイヤーズ監督渾身の一作でもあり、やりたくてずっと温めていた企画なんだろうなというのはひしひしと伝わってくる。特に会社の若僧どもが『オーシャンズ』ゴッコに興じている隣で車のハンドルを握っているのはあの『タクシードライバー』のデ・ニーロ(!)というシーンは何とも秀逸で、気に入っております。
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