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ザ・ウォークのRenのレビュー・感想・評価

ザ・ウォーク(2015年製作の映画)
4.0
個人的にこれはかなり当たりなほうのゼメキス作品。普通に面白かった!劇場の臨場感で体験するべきだったのだろうなと若干の後悔はありつつ、Netflix配信終了直前に駆け込みで観られてよかった〜。

ゼメキス監督は、社会性・批評性・メッセージ性とかでなく取り敢えず面白いものをそのまま撮るという個人的なイメージがあって、今作に関してはそれがしっかりハマっていた。そもそも綱渡りという題材自体が面白いのだから面白くなるのは当然っちゃ当然なのだけど、映画化されるべき監督の手で映画化されたなぁとしみじみ。

勝手に『127時間』みたいな映画なのかなと思っていたら、もっともっとカラッとしたエンタメだった。芸事を極めた変態の自伝物語かと思わせて、中盤はド直球のケイパームービーとして面白い。共犯者の招集、ビルへの潜入、ワイヤーの設置、一つひとつが適切な尺で捌かれていく。

CGも合成も使える「映画」という媒体では、所謂 "生" 感が欠けることも往々にしてあるが、今作はそこに2015年の技術を総動員して極限まで緊迫感を高めようという真摯な姿勢が伺えた。というか、それが無くなった瞬間に駄作になる可能性も孕んでいる危険な題材。
舐めるようなカメラワークとCGを融合させた画づくりは、『フォレスト・ガンプ ~』のラストの羽のシーンから良い意味で何も変わっていない。

もちろん、フィリップが自身の芸術を極めた果てに訪れる緊張と絶景のカタルシスも絶大。正直綱渡りシークエンスはちょっと間延びしたかな〜という印象も無くはないが、これくらいなら許容範囲内。もちろんジョセフ・ゴードン=レヴィットの、終始「何言ってんだお前」感が迸る演技の力も◎。

その他、
○ あまり言っている人がいないけど、ビルの屋上で作業しているうちに空の色が移り変わっていく感じが最高。夜更けから日の出まで、初日の出を見に行ったときと同じ気持ち良さ。
○ 今作の助演俳優はワールドトレードセンター。9.11で今はその姿は無いが、ラストシーンの演出は間違い無くツインタワーへの追悼と感謝。
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