コマミー

ペインテッド・ヴェール 〜ある貴婦人の過ち〜のコマミーのレビュー・感想・評価

3.8
【お互いの鈍さ故に】


[気まぐれ映画レビューNo.98]



この作品を観て、私は人生のパートナーを得た時には、互いを知り合うべきだと学んだ。

とは言っても、この作品が描く時代に、"結婚"に於いて自分の意見が通る事は不可能に近いらしい。だからこそ、今の時代は割と恵まれてるのかもしれない。

本作はあまり知られてはいないが、是非とも皆さんに観てもらいたい作品だと思う。人生に於いて"最も大事な事"がそこに詰められているのだから。
それは"互いを思いやる事"である。些細なミスが、夫婦の関係に大きな傷を残す事だってある訳で、そのミスが導くものが"不倫による関係"の悪化である事がうかがえる。

この作品を観て、最初は"ナオミ・ワッツ"演じるいいとこのお嬢さんである"妻キティ"が悪いのではないかと決めつけていた。しかし段々と観るうちに、"エドワード・ノートン"演じる冷淡で口下手な"夫ウォルター"の"徹底的な精神的な仕打ち"も垣間見られ、どちらも悪いと感じてしまう。
私は夫婦間を描く作品で、ここまで"精神的に辛い映画"は無いと思う。ただでさえギスギスした雰囲気の夫婦に、"中国の伝染症"と言う問題も生じてくると、ますます胸が痛くなる内容にさしかかっていた。

だが本作は恐らく、ハリウッドの監督が描く中国を舞台とした美しい作品の"最後の作品"ではないだろうか?これ以降、ハリウッドが中国を描く場合、結構な迫力のVFXを使ったり、物語よりもそっちの方に集中してしまう作品が多くなってしまう。
その反面、本作は静かで美しい作品である。"アレクサンドル・デスプラ"が奏でる音楽も、雰囲気に合っていて尚良い。主演の2人の演技も哀愁漂ってるし、"アンソニー・ウォン"の役柄の立ち位置も好きだった。

添加物が一切ない、ハリウッドが描く中国を観たい人にオススメです。
コマミー

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