17世紀の日本におけるキリシタン弾圧と宣教師の葛藤を描いた遠藤周作の小説を、バチバチのカトリック教徒マーティン・スコセッシが映画化したやつ。
エンタメ要素はほとんどなく、だからこそスコセッシがマジで作ったのやなと伝わる。
音楽がほとんどなくて、波の音や草むらの音などほぼ効果音のみ。その効果音すら消えた時の無音の際立ちやばい。
バイオレンス描写は壮絶で鮮烈。画のインパクトつよつよ。死ぬほどストイック。
映画化されるって聞いて原作読んだけどかなり忠実やと思った。アメリカ人監督がこんなに真摯に日本の小説に向き合うのか!って。
むしろ本読むよりも映画で観たほうが人物の情感が入ってくる感じがあった。
役者の熱量、画的な見せ方など諸々ハイレベルで、楽しくはないけど観入ってしまう迫力がある。
アンドリュー・ガーフィールド演じる理想に燃える若者宣教師ロドリゴ。繊細な容姿が、教えと現実の間でもがく痛ましい姿に似合う。ガーフィールド本人も神経質そうやしな。
フェレイラを演じるリーアム・ニーソン。転んだ理由をつどつどと理論立てて語るシーンの説得力抜群。語り口は堂々としてても、目がなんとも後ろめたそうなところが「そうやろなぁ」って思う。
イッセー尾形演じる井上筑後守。
歴史ってのは、悪役がいてそれと戦う正義がいて、みたいな単純な二元論では語れない。正義の反対側にはまた別の正義がいるっていうのがイッセー尾形の演技のおかげでよく分かる。
主人公からしたら敵やけど、筋通ってる。筋通ってるからこその強敵感。
窪塚洋介演じるキチジロー、役柄的にはヘイト集める位置におるけど、それでも一般人よりはだいぶ精神強い方やと俺は思う。
てか作中一番タフなのって、意外とキチジローなんじゃないか。
見えないものを信じ続けるのって強さ必要。信念捨てたふりして生き延びる事を選ぶのもまた、強さが必要。
初見では人間の弱さを描いた作品に思えたけど、考えるとやっぱり、人間は強い、強くあれる、って話なのかも。