このレビューはネタバレを含みます
『ビューティフル・マインド』のラッセル・クロウが、また生きずらそうな人間を演じてる〜!キツイよな…頑張ってくれ〜!という謎の気持ちになる、謎のツボを押された。
あれかな、精神不安定な人間が懸命に日常生活を送ろうとしている話が好きなのかもしれない。
吹替が山路和弘さんでコッチで鑑賞。別に声優ファンというわけじゃないし、洋画は字幕で見てナンボ、なんて思ってたのに、DVDで洋画を見るようになって、吹き替えもいいじゃん!と思うようになったから人生っておもしろ楽しい。
思った以上にファザコン映画で、マザコンというよりエレクトラ・コンプレックスを感じさせるつくりで、
父が好きで、父と似た男を求める娘、というのを意識的に、美しく描いていて、
なんか…新鮮というか、父娘の映画というと、娘の恋の相手には父親似の男をあてがうように作られていたり、父親目線で描いた作品は見たことある気がするんだけど、
この作品のように父親目線と娘目線を行き来して、ファザコンを抱えてしまった娘の苦悩を描いているところが、うん…妙に新鮮に感じた。
彼、アーロン・ポールの後ろ姿やカメラが引いたときのヒゲをたたえた顔つきが、とにかく、ラッセル・クロウに似ていて…
彼女を追う彼の姿は、娘を追う父親の姿に重なり、父親と寝る娘、娘と寝る父親、というふうに見えてきて…
これ、ちょっとすごい映画なんじゃないだろうか。過去と現在を交互に見せる構成、情報を出す順番も効いてた。
どんな種類のコンプレックス(愛着、執着、依存、劣等感…)であっても、こじらせると苦しいんだよなあ、などと思った。
父親から娘に対する過剰な愛情も、コンプレックスと言えるのかもしれないなあ、などと思った。
まあ普通に考えて、彼は最高の存在だよね。大好きな父親のことを尊敬してくれているから、父親という他の男に向ける大好きの気持ちを尊重してくれる、過去の恋愛経験を知っても、過去があって現在の君がいるんだろうと受け入れて愛してくれる、精神不安定な部分をさらけ出しても、受け入れてくれる、まさに優しい父親のような彼氏。そりゃ惚れるわ。
彼との付き合い、そして、彼との別れを通して、自分で自分の心に向き合い、過去と向き合い、行きずりのセックスという自傷行為から逃れて、父親の死を受け入れて、父親の呪縛から逃れて、コンプレックスを乗り越えて、改めて彼自身に向き合うところまで描いたのが、本当に、新鮮だった。
男性との付き合い方がわからず、メンヘラのせいで彼氏に見捨てられて、アル中になったり、ドラッグに走ったり、セックス依存性になったり、その過程でシングルマザーになって、貧困にあえぎ、それでもまだ男性との付き合い方がわからずに騙され続ける、そんな若い女性はたくさんいる。
単純に彼氏の愛の力で救われる話じゃなかった。
これほんと、ちょっとすごい映画だと思った。うまく言えないけど。この映画に救われる女性は一定数いるんじゃないかという気がした。