草野なつか監督の初長編ということで、監督自身が認める通り荒削りながら、傑作。『王国』と同様に現実が虚構(創作)に変容する瞬間を映しとる。シンプルな三角関係に見えて、その奥行きは深く、如何様にも解釈できる余白が在る。これだけの人間ドラマが作れる人が『王国』を作ったか…!
正直、主演の石坂友里さんの演技の辿々しさ(相手の澁谷麻美さんはこの時点で見事」や、映される場所が大阪と東京(インサート的な市ヶ谷の釣堀)を行き来する感じなど、恐らく制作時点でも色々あったことが想像されるが、初見の映画祭でこれが流れたら、とんでもない新人が出て来た!となると思う。
綾はラスト10分くらいまで一貫して嫌な人だし、幸子は一貫して良い人過ぎるんだけど、そこがリアルというか、物語のために人物像がブレない。確かに、彼女たちの選択によって、2人の関係性が変わっていくことに納得できる。そして、ラストのラジオドラマよ…!あの撮影方法と演出を考えた監督は天才。
しかし、数少ない出演作が、世界に誇る日本の監督たる草野なつか監督に杉田協士監督(更には『リング・ワンダリング』の金子雅和監督作にマーティン・スコセッシ『沈黙』!)という石坂友里さんは何者なんだ…。日芸卒か。もう演技の仕事は抑えめで日本と韓国でモデルさんとして活躍されてるのかな。