セトヤマ

消えた声が、その名を呼ぶのセトヤマのレビュー・感想・評価

消えた声が、その名を呼ぶ(2014年製作の映画)
4.0
アルメニア人、ナザレットを通じて描かれる悲劇。
第一次世界大戦、オスマン帝国で起こった大虐殺の歴史。
特に前半部の描写が生々しく激しい痛みを伴った場面が続く。

彼が目にするもの、国境を越えて様々な国を訪れる姿は、戦争の為、難民となって世界に散っていった民族の姿。

生きるため彼が行う事は時に許されないこともある。
ただ、そんなナザレットがあるシーンで石を投げつけようとして見た景色に自分も同じくハッとする。
それは聖書の言葉である。

待ち受ける運命は過酷で、時に負けてしまいそうになりながら彼は立ち上がり歩き続ける。その姿は涙なしには見れない。

これは過去の歴史を描いた映画だが、現代社会への警告なのだなと。この歴史から学ぶべき事は何か。そして監督が描こうとしている事は何か。
目を背けず直視する事で見えてくるものは何か。

最後、ラストカット。
この映画を象徴するワンカット。
果たして我々はどこから来てどこに向かうのか。

ナザレットの旅路を思いながら、自分も映画館からの最寄りの駅で電車に乗らず、
一駅分歩きながら、歩く事で見えてくる景色を映画と重ねたのでした。