去年、凄く評判は良かったけど見逃していた一本。
渋谷、アップリンクで鑑賞。
1973年に発表され212分という長さ、
ニュージャーマンシネマのライナー・ベルナー・ファスビンダー監督。
個人的にはこれだけで凄く観たくなる。
そして傑作SFでした。
SFらしい装置とか仰々しいことはないのだけど、
設定とか、テーマとかこれはもうSFなんですね。
物語がドンドン雰囲気を変えていくのが楽しい。
最初は謎だらけでアート的でもあり、それが哲学的な話になったかと思えばアクションになり、
そしてドイツ映画といえば、カリガリ博士に代表とされる様な、
誰が狂っていて、何がオカシイのか、観ている方もオカシな気持になっちゃう様な、精神世界への葛藤が実に見事。
オカシイのは自分か?世界か?
みたいな。
そして、世界の謎と平行して人間の悪事も描かれて、
空想話が実は現実で誰かに嵌められてるのかも、
というサスペンスを生み出し、
出てくる人、それぞれが強烈に怪しくなっていく。
カメラワークがグルグル登場人物を囲む様に回り、
それが妙に平衡感覚を狂わす。
カメラ写りこんじゃうくらい画面に出てくる鏡とか、
映画冒頭でも出てくるけど、鏡に写っているのは何だ?
と映画を通して問うてくる。
ちょっとね、最初主人公が誰か分かりにくいのがもったいないなぁとは思うんですけど、
これはもう凄い極上のSF映画でしょう。と思うのです。
観ていて背筋がヒヤリとする、実に怖い映画でした。
いやはや映画館から出たらそこは果たして現実なんでしょうかね。