ジーナ

少しの愛だけでものジーナのレビュー・感想・評価

少しの愛だけでも(1975年製作の映画)
3.9
ファスビンダーによるテレビ映画。

ピーターは、バーを営む両親から愛を感じずに生きてきた。
それでも自分を愛して貰おうと願い、両親の為に一軒家を購入する。
最初の内は両親にも喜ばれ、愛を感じることが出来たのだが、唐突に両親はその家を売ってバーの仕事も廃業すると言い出した。
ピーターは追い出されるように恋人のエリカと共にミュンヘンへ引っ越して来たが、エリカから愛されなくなる事を恐れ、家具やプレゼントを買い続けていく内にローンが膨れ上がっていく。
そして、子供も産まれ、借金をしてしまい、状況は次第に悪化してゆく・・・。
※続きはコメント欄に。

お得意のメロドラマに加え、一人の青年の自立から自滅までの姿を描く。
優しくも自制が効かなくなった男とされを支えようとする妻の姿が時に微笑ましく、時に切ない。

また、
<ピーターがとある事件を起こし、心理カウンセリングを受けている時間軸>

<エリカと結ばれ、ピーターがとある事件が起こすまでの時間軸>
を交互に映し、
<文字だけで状況説明するシーン>
も合間に挿入される特殊な構造をしている。
この演出がとても面白かった。
全体的に心地よい音楽が流れるのも何だか皮肉に聞こえて良い。

希望がほとんど描かれないストーリーでしたが、本当に素晴らしい映画でした。
ファスビンダーの右腕的存在の撮影監督ミヒャエル・バルハウスのカメラワークは流石と言った所ですし、主演俳優はファスビンダーの「第三世代」で皆にからかわれていた青年役の人なのも要チェック。
ジーナ

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