ひでやん

ヘイトフル・エイトのひでやんのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
3.6
タランティーノが放つ西部劇仕立てのミステリー。

映画10本撮ったら引退するというタランティーノの8本目(キルビル2はノーカウント)の作品。タラフィルムエイト!

駅馬車でミニーの紳士服飾店に向かう道中、二人の賞金稼ぎ、囚われの賞金首、新任保安官のやり取りは楽しめた。「リンカーンからの手紙」という小道具をユーモアに活かし、お得意の会話劇で軽くご挨拶。

ミニーの店は細部にまでこだわったセットで、店内の雰囲気がいい。そこで登場するのが店番のメキシコ人、絞首刑執行人、元将軍、カウボーイ。

個性豊かなキャラたちが加わり、舞台の役者が揃った。南軍と北軍、捕らえる側と囚人、黒人と白人という一触即発の状況を作り出す構図は流石だ。

「遊星からの物体X」から最も影響を受けているんだ、というタランティーノ。

猛吹雪の雪山、密室、カート・ラッセル、誰を信じればいいのか分からない状況など、影響受けまくりだ!

誰が毒を入れたのか、猜疑心を抱く悪党8人は、この先どんな展開を繰り広げるのかと思っていたら……9人になっちゃった。なぜヘイトフルナイン?

善と悪を線引きすると善1と悪8ということか?

全体的な感想をトランプの「大貧民」で例えるなら、出せるカードを持っているのにパスをして、10までのカードで散々遊んだあと、絵札とジョーカーの連続攻撃で畳み掛ける感じだった。悪く言えば前置きがちょいと長い。

オマージュや遊び心を感じる演出については物足りない印象。初期のレザボアやパルフィクやキルビルの中に、自分の好きなもの、やりたいことを散々詰め込んで気が済んだようだ。最近の作品は一つのテーマをじっくり描いている。

例えるなら…また例えるんか!

若い頃はワインでもウイスキーでも酒ならなんでも飲んでやる、とがっついていたが、年を取ると一つの酒をゆっくりと味わっているようだ。下手な例え。

出演者は豪華で、タランティーノ作品常連メンバーは勿論最高だったが、一番好きだったのはジェニファー・ジェイソン・リー。名演技だった。
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