田島史也

ゴジラ キング・オブ・モンスターズの田島史也のレビュー・感想・評価

3.5
エマの行動理由がイカれてる。地球にとって害悪なのは怪獣ではなく人間、なんてのはゴジラシリーズの前提のようなものだから、それを行動理由にするのはいささか軽薄。人間が人間を害悪だと決めつけて、神たる怪獣のために行動するのはお門違いで、害悪だと解するならば害悪らしく振る舞えばそれで良い。人間が神の生殺与奪や神にとっての理想郷を決めることは出来ない。だからこそ、これだけ壮大な物語のキーマンの考えがこれなのは、少し残念。犯人の動機がしょうもないと物語の面白さが半減するように、本作もどうしてもエマの思想が邪魔をして、「何を見せられているんだろう」感が強まる。安易すぎる思想のせいで、エマは「ただのイカれたやつ」になっちゃった。理解も示せない。かと言って、完全悪として非難することも出来ない。せめて、怪獣を解放し、私が神の力を手に入れる、位のことを言ってくれた方が気持ちが良かった。

CGは相変わらず凄い。キングギドラ誕生の瞬間とか。十字架との対比がとても良い。焦土と化したボストンの大地も、空の描写も、まさしく地獄と呼ぶにふさわしい。サウンドエフェクトも最高。ゴジラのテーマソングが流れた瞬間は鳥肌。ハリウッドの力を思い知らされた。

渡辺謙が神風特攻隊の任を担ったのは、なんというか、ね。笑
少々ブラックジョークが入り交じりながらも、しっかりと感動的なシーンに仕上げてきたのはさすが。

基本モナーク視点だから、ゴジラとの共存路線という世間一般からするとイカれた思想を観客にも共有している感が否めないのは、どうもなぁって感じ。この手の組織は、もっと世間から虐げられるはずなんだけど。黙認されてるってことなのかなぁ。対怪物の思潮を巡っての人間同士の対立があまり描かれてないから、登場人物たちの立ち位置とか、「なんのためにやっているのか」とか、根本的な説明が欠如しているようにも思う。

うーん、怪獣との戦いとか、作戦実行過程とか、そこら辺はものすごく満足感高いから、もう少しそれぞれの人物のパーソナルな部分に焦点を当ててもいい気がするけど、そういう作品ではないってことなのかなぁ。
田島史也

田島史也