映画界に存在する、博士の◯◯タイトル多すぎ問題に決定打を与えた作品というイメージがあった。全て合わせると「博士と彼女の愛した異常な数式」となる。なんかすげぇぞ。
タイトルとジャケ、冒頭の二人の馴れ初めから「あ〜、なるほど。理系のナードくんと、文系の美女がお互いに無いところに惹かれあって、最後は二人で愛の方程式を発見するんやろうなあ」と、肉体的にも精神的にも鼻をほじりながら予想していたが、開始30分辺りから物語は大きく動き出した。
恋人夫婦の不治の病、難病、交通事故もののストーリーは、女性側が罹患する率が圧倒的だが、実話をベースにした本作は、若き天才青年が、全身の筋肉の自由が蝕まれていく病に侵されていく。
病気が進行していく過程を伝える彼の演技力は勿論、最愛の相手の現実を直視する、ヒロインの演技も迫真に迫っていて素晴らしかった。本当に辛い時、人は目ではなく、鼻と口で泣くんだよなあということに納得しながら観入ってしまった。
「あなたを愛した」という台詞が物凄く重たい。愛するという行為は、現在形の時と、その他の自制の時では意味が大きく変わってしまうが、過去形の「愛していた」ではない、現在完了の愛の形は初めて見た。
自分がこの映画を鑑賞するうえで最大に失敗したと感じたのは、眠気を抱えた状態で観て、後半に突入したことだ。
ラストの感動にして最高のクライマックス(あとから感想サイトで確認)の相手を、まさか人違いとして認識して観ていたとは…。人類はもう少し進歩して、一度観た映画の記憶を消せる装置を発明すべき。
装置が完成したらまた観ようと心に決めた一本。