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パレードへようこその消費者のレビュー・感想・評価

パレードへようこそ(2014年製作の映画)
4.7
・あらすじ
舞台は1984年のイギリス
同性愛者の権利獲得の為にロンドンで活動を続けてきたとあるグループ
彼らを率いるマークはある日のプライドマーチで自分達と同様にサッチャー政権による圧力で苦しむ炭鉱夫達との連帯を思いつく
そうして結成されたLGSM(炭鉱夫支援同性愛者の会)という団体
当初は同性愛者にも賛同者は少なく、募金を受け入れてくれる炭鉱夫達もなかなか見つからなかったがウェールズのオンルウィンという地域にあるディライス炭鉱に唯一承諾を受ける
両団体の顔合わせとして彼らの元にやってきた男性、ダイは同性愛者の団体と知らなかった事から驚きを見せるが彼らを快く歓迎する
そしてLGSMの面々はオンルウィン村の炭鉱夫達の元へ行くが冷ややかな視線を向ける者も少なくなかった
しかしメンバーの1人、ジョナサンのダンスをきっかけに徐々に村人達と彼らは打ち解けていく
その後、同性愛者達への偏見を持つ少数の村人達は新聞社への密告やそれがきっかけとなった採決の時刻を勝手に前倒しにするなど嫌がらせによるトラブルもありつつも活動は前進していき…
という実話を元に描かれた社会派ドラマ作品

・感想
横暴な権力者(主にサッチャー)や警察、司法という共通の敵をきっかけに立場も属性も違う人々が連帯し、共闘していく中で凝り固まった差別的な思想や常識から人々が解き放たれていく姿は本当に美しく、それによって女性達もまた自分を解放させていく様はまさに本来のフェミニズムという感じで素晴らしかった

ジョーの家族や一部の村人達、そして警官や街の人々などの差別的な振る舞いも非常にリアルでだからこそ彼らの闘争がどこまでもかっこよく映る
また不勉強ゆえに知らなかったけど成人するまでは同性愛を違法とする、なんていう横暴でしかない法律がイギリスにかつて存在していた事も衝撃的だった

LGBTQ全体への差別は意識的か無意識かを問わずまだ世界中で根深く残っており、時を経る毎に改善は徐々にされているものの日本においてはまだまだ遅れているのが現実
なので日本でもこういう理不尽に虐げられる者同士の連帯や共闘というのは動きとしてあっても良いんじゃないかと感じた
そもそもホモフォビアの人々はまともに差別の根拠などは有してない事が多い
淡々と真実を広め啓蒙していく事でLGSMや炭鉱夫の人々が大きな力を獲得した様に日本でも非論理的で馴染みがない故に勝手に恐怖や嫌悪感を抱いている様な人々を少しでも減らしていけたらなぁ、と改めて感じた

エンディングで語られていた活動参加者達のその後も喜ばしい事実が多く感銘を受けた
ジョナサンの勧めで大学へ行ったシャンが地域で初の女性地方議員になった事や全国炭鉱組合の全会一致によって同性愛者の権力条項が法律に盛り込まれた事など
マークがエイズ発症で26歳という若過ぎる歳で亡くなってしまった事は悲しいけれど彼の社会を良くしていこうという意思は本作の影響も手伝って残り続けると思う

自分の人生を諦めず行動する事が大事なんだ、とあらゆる人々にエールを送ってくれる愛に溢れた良い作品だった
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