おおさこ

の・ようなもの のようなもののおおさこのレビュー・感想・評価

4.0
〝みんな最初は◯◯の・ようなもの〟

森田芳光監督の1981年の商業デビュー作『の・ようなもの』のまさかの続編です。
オリジナルは、まだまだ若くてフラフラ〜としている落語家志し魚(しんとと)さんのお話です。
落語家と言ってもまだ二ツ目。やっぱり落語家と言えば真打ち。
つまり〝落語家の・ようなもの〟の若者のモラトリアムを描いた青春映画です。とは言え、『家族ゲーム』の最期の晩餐を模した横並びの食卓シーンがそうであるように、デビュー作からしてとってもヘンテコ。棒読なセリフ、独特な音使い、画の切り取り方に編集のリズム。全てがヘンテコ。でも、一度癖になると気持ちいいを超えてもはや快感。これが天才と言うものなのか!

今回、その続編のメガホンを取るのは森田監督の助監督だった杉山泰一。
正直、オリジナルのようなレベルは期待してませんでした。だって、ピカソに絵を習ってもピカソにはなれないもん。ところがです、始まってすぐ確信しました。こいつは・・・パねぇーと。オープニングの画の切り取り方や音の使い方、タイトルの書体を観ただけで既に森田芳光臭プンプン。天才の生理的なリズムをしっかりと継承していました。師匠の技を盗んで自分を出す。まるで、映画で描かれてる落語家の世界のようです。
続編の内容は引退した志し魚さんをマツケンがあの手この手で高座に引っ張り出す、と言うものです。几帳面で遊びのないマツケンがいい年こいてフラフラ〜としてる志し魚さんと触れ合いながら成長していきます。まだ何者でも無い者が何者かになろうともがく。青春のうずきが描かれていました。

かつて〝◯◯の・ようなもの〟だった人。これから◯◯を探す人。
この映画を観てたくさん笑って泣いて下さい。人生って素敵やん、そう思えるはずです。