おおさこ

真実のおおさこのネタバレレビュー・内容・結末

真実(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

記憶と真実の牢獄


人の記憶とはなんと不確かで
「真実」とは人の数だけあるんだなぁー
と思った。


オープニングシーン、大きな庭の望むガラス張りの居間で、記者の質問巧みにたぶらかす
ドヌーブさまの姿が抜群にカッコ良い。
タバコをプカプカ、ケムリをもくもく。
この煙のさまが、まさに「記者を煙に巻く」
ドヌーブさまのただならなさを引き立てているように見えた。

そんな中、ビノシュ一家が鬱蒼としたお庭から
入って来ます。このシーンも木々が緑のトンネンようで、日常とは違う世界に迷い混んできたようでワクワクドキドキ。
ビノシュの娘さんがその後持っていった
ぬいぐるみが「ウザキ」だったのはだだの
偶然?

このビノシュ一家のシーンを挟んで、
インタビューを受けるドヌーブさまの
シーンに戻りますが、さっきまで記者との
正面での切り替えと打って変わって、差し込まれるのは「よこがお」のショット。
ハッとさせられました、さっきまでとは違う
一面を見せられているようで。

自伝『真実』にあれもこれも書いて無いし、
どう言う事とビノシュに詰め寄られる
ドヌーブさま。
「私は女優よ、真実なんてつまらない事は書かないわ」とのたまう。...カッコいい!痺れました。


この冒頭の数分間ですっかりヤラれてしまいました!

「映画」が大きなモチーフになっているが故のレイヤーにつぐレイヤー。

それとラストに至るまでのメタファーの数々。
壊れたオモチャの家を直したり、オズの魔法使いを出したり・・・。

あえての違和感ありな切り返しや、要所要所で使われる暗転などの演出もキレキレでした。

これらのキレキレ演出の中でも突出してたのは
ラストお庭のシーンのドヌーブさまの髪型のアップ。これどう見たって「めまい」ヘアーですよね?

人はやはり見たいモノだけを見るし、
なんなら見たいものを人や記憶に投影してまう...。
めまいヘアーみて、何となく良い感じに終わっているようなラストも.....「ぜーんぶマボロシやでぇー」とKore-eda監督が意地悪に笑っているような気がしていました。

けど、すべてマボロシかと言えばそんなわけではないのじゃないかとも。
自伝『真実』にはたくさんの書かれた事と
たくさんの書かれなかった事がある。
それはドヌーブさまの最初の言葉を借りるなら
真実はつまらないから書かれていない。
つまり、サラおばさんや付き人のデュークと言った書かれなかった人たちへの想いは紛れも無い「真実」であるという事。

また、劇中劇として演じられるドヌーブさまたちの演技からこぼれ落ちる感情や、それらに胸をかきむしられる観客たちの気持ちはやっぱり「真実」なのではないかなーと。

たっぷりの嘘を描く事で「真実」を少しづつ
浮き彫りにしていくこの作品、大好きです!


エンドロールでお家の裏の刑務所の前をお散歩するドヌーブさまのアウトテイク。めっちゃ楽しかったけど、これもた作り物、映画なんだなぁーと再認識。
そしてこの映画が「記憶と真実の牢獄」についてのお話だったのかなぁーとも思わされました。