るる

セッションのるるのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

お見事。

どんな形であれ、理解者がいる、という幸せ。

父からの自立、夢を実現する動機の確立、世紀の名演を演じてみせる機会、技術、胆力、迸る生命。天才が開花する瞬間。

なるほど圧巻のラストだったが、DVDで見ると肝心の音がそこまで響いてこなかったのが残念だった、私の耳が良くないからかもしれないが。

先生のアメと鞭はどこまでが計算尽くなのやら、優しげな態度にこそ狂気を感じるとともに、彼に心酔できるなら幸せだとも思った。しかし、師に心酔し、付き従うだけではプロにはなれないのだ。

デジャヴとして描かれる主演奏者の交代劇、滑稽にも見える事故のくだり、緊張の糸が切れ解放に至る描写など、よくできていると思ったが、前評判から、映像的にももっとギリギリに追い詰められるのかと思っていたので、そこは少々拍子抜け。

主人公に共感しながら見たので、逃げずに立ち向かった彼から勇気をもらえた。私も死ぬ気で頑張らないとなあ…マジで。

一方的に彼女に別れを告げる主人公の思い詰め方、身内に理解されない孤独、好きだった相手が自分の最も愛するものを必要としない人なのだと思い知ったときの虚無感、天狗になったり、ぬか喜びにホゾを噛んだり…

若いよね。学生の頃に見たかったかも。いま見ると苦笑しちゃうけど、でも、何故ああいった思いつめ方をしてしまったのか、という点を感じられたのは良かったと思うし、

糸を切られた凧のように我に返って真っ当な日常に戻っていくのではなく、ああして極限まで追い詰められて、突き詰めた先でしか見えない景色を描いた点は、苦労が報われた結末と感じて、好きだった。

はたして必要な苦労だったのかはともかく。指導法の是非はともかく、凡人が天才に肉薄するには無茶も必要、ということかもしれないと思った。

ああした指導者の狂気と、ああした集団にいるからこそ陥ってしまう狂気を描くという意味では、もっと上があると思うし、それをメインに描くなら、徹底的に批判的に描いて否定してほしかったところだけど。

青春映画として見れてしまった。そのことが良いのか悪いのかはともかく、こういう拗らせ方はあるよなと、頷いてしまったのは事実。

2017.5.追記
ララランド未見だけど、評判を知るにつけ、こういう師弟関係を比較的、肯定的に見せたのは、監督の意図というより、監督の若さ、視野の狭さがそのまま出た結果、という気がして、ちょっと見方が変わっちゃった。
でもうん、こういう青臭さ、愚かさを完全に否定しきれない人間としては、やっぱりそれなりに刺さる。
オッサンになってもこういうの作ってたらイヤだけど、若きクリエイターの出世作と思えば、やっぱり多少なりとも肩を持ちたくなってしまう、かな。

年取ってから観ると見方が変わりそう。気持ち悪いし、クダラナイ、って、バッサリ距離を取って観れるようになりたい、な。
るる

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