「いつでも富良野に帰って来んだぞぉ〜!」
という五郎さん(田中邦衛)の絶叫を聞きたくて本作を観た。
もう3度目くらいの鑑賞。
人それぞれが持つ “秘密”。
決して人には話せない心の傷、悩み、痛み。
愛する人の秘密を知ってしまった時、果たしてそれを許せるのか。
共に傷つくだけなのか、それともそれを忘れさせることが出来るのか。
傷つき悩みながら成長していく子どもたちと、それを見守る父親の、家族の愛の物語だ。
今回の純(吉岡秀隆)も相変わらずヘタレ気味。
それに比べて、親友の正吉(中澤佳仁)の男らしさと言ったら! (←男が惚れる男)
でもまぁ、そんな純だからこそ、この物語が成立するのかもしれない。
行方不明になった蛍(中嶋朋子)。
今までずっと真面目で心根の優しかった蛍が、初めて道を外してしまった。
いや、“外した” という言葉はそぐわない。
これは蛍が、ただ自分に正直に生きようとしただけのことなんだろう。
たとえそれが茨の道であろうとも。
今回のゲスト出演者がお見事。
抑えた演技の大竹しのぶ。
圧倒的存在感。
芯がしっかりした包容力のある女性。
この人はこういう役を演ってこそ光る。
全世界の人を敵に回しても、親だけは子の味方だ。
たとえ道を外しても、子を許し、子を案じる。
世間から孤立しても、子を守り、子を信じる。
その様々な思いが一気に爆発し、無言で立ち去って行く蛍に向かって、思わず叫んだ五郎の一言。
「蛍〜! いつでも富良野に帰って来んだぞぉ〜!」
一瞬間をおき、子供のように駆け戻る蛍。
泣き崩れる蛍のあの言葉に、私達も涙腺崩壊。
やはり蛍は優しい子。
間違いなく五郎さんの子ども。
五郎さんの育て方は間違ってなかった。
そう思った。
*****
私事で恐縮ですが、4月から娘が社会人としてスタートします。
親元を離れ、車で5時間ほどかかる離れた土地で一人暮らしを始めます。
先週、愛車に多少の荷物を積み、旅立って行きました。
別れ際、私はどうしても言いたかった。
「辛くなったら、いつでも帰って来んだぞぉ〜!」
が、しかし、そう言おうとした瞬間、娘の一言。
「まだ荷物残ってっから、来週また帰ってくっから」
ガッチョ〜ン!
もう帰って来るんかーーい!
出かけた涙も引っ込みました。
まぁ、現実はこんなもんです。笑