つかれぐま

トイ・ストーリー4のつかれぐまのレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)
5.0
7/13 大泉#4(吹替)

「あばよ相棒」

前作を締めたウッディからアンディへの台詞。今度は我々が相棒ウッディにお別れを言うターンだ。

前作の結末を「緻密に作られた完璧な輪廻」とすれば、本作は「その輪廻からの解放」か。先に結論を書けば、どちらも傑作。

子離れしたはずのウッディは、自分の心の隙間を埋めるようにボニーへの過保護がひどい。それどころか、ボニーの向こうにアンディの面影すら求めてしまう有様。それを見透かしたように、ボニーの心はウッディから離れて行く。居場所を失うウッディの姿は、まるで子供の巣立ち後に抜け殻となった親だ。

そんなウッディの前に現れたフォーキーはオモチャの赤ちゃん。ウッディは再び「親」になり、ここでようやく自分と向き合い始める。

ボーピープとの奇跡的再会は正に「運命の糸」。彼女と見た「開かれた世界」(遊園地とアンティーク屋のため息がでる美しさ!)や、ギャビーという「自分がこうなっていたかもしれない」存在との出会いが、限りある命を悔いなく生きようという決意(3で一度は死を覚悟したことがここで効いてくる)を促し、その一歩を踏み出す。

バズたちとの別れは失うにはあまりに大きな代償。その決断の勇気に感動した。(子育てをほぼ終えて、かつ自分のセカンドキャリアを模索中の)我が身には、とてつもなく刺さる結末だった。

ここまでを本作の表面的テーマとすれば、裏面的(メタ的)テーマは、もうひとつの親離れ子離れか。ウッディのアンディからの子離れを描いた3を「補完」するように、本作は我々観客「親」が(ウッディという)子から子離れすることもテーマにしていると感じた。

ウッディは我々にとって「友人であり息子でもある」二役の存在だ。ここが本作が賛否両論を呼ぶ原因ではないか?

友人としてみれば、この結末が受け入れ難い気持ちも分かる。一方息子としてみれば、成長した彼の決断を応援するのが親の役割だ。

過去作では、他者への価値観の押しつけ(2のプロスペクターに対してやったような)も見られたが、本作ではギャビーの話をキチンと聴く優しい姿勢。ウッディの素晴らしい成長が伺える場面だ。そんな彼には旅立つ資格があるとここで感じた。

否定派の中に「シリーズ過去3作を否定された」との意見も散見されるが、現実の親子の思い出がそうであるように、「我々&過去作という親子」の思い出も(記憶の中で)これからも生き続けるはずだと私は思う。
それよりも、そんな本作を許さないという姿勢の不寛容さのほうが、よほど問題だ。

ウッディの「さあ行くぞ」

なんだか嬉しくて泣けたよ。
寂しいけど、前作での彼の言葉を借りて言いたい。

「あばよ、相棒」