数ある作品の中から、なぜこの作品のDVDを選んだのか思い出せないけど、つまらない偏見でこれほどの傑作をDVD鑑賞での後追いだとしても見逃さなくて良かった!
見ている間何度も目頭が熱くなったし、最後のタイトルロールが流れた瞬間には涙腺崩壊してしまったじゃないか!
間違いなくこの映画は「日本アイドル映画史上に残る傑作」だと思う。
…文化系青春小説の金字塔と言われる劇作家 平田オリザの原作を、ももクロ主演、本広克行が監督で実写化との事。
平田オリザさん全く知らないし、ももクロの事もほとんど知らない。なにより本広克行監督とは相性の悪さを感じていたので、それほど期待しないで見始めた。
演劇部の部長が高校生活最後の1年間に元学生演劇の女王である美術の新任教師に刺激を受け、全国大会を目指す。
…というプロットだけお伝えしてもあまり新鮮な内容でもないし、そんなに面白いのか?と思われる方がほとんどだと思うけど、この作品の素晴らしさは「目新しさを狙わず、ストレートで且つディテールとメッセージにこだわったシナリオ」と「自然でバイタリティー溢れるキャストの魅力」だと思う。
映画的事件はなにも起こらないが、高校生活の中で起こる日常の出来事の表層だけをなぞるのではなく、「迷い」「憧れ」「嫉妬」「決断」等の“誰もがその頃に経験する心の機微”を丁寧に拾い上げる。
セリフも素晴らしくて、言っている内容としては普遍的なものではあるけど、登場人物たちがこの物語の中で気づき、本当に自分の言葉として届けられるかのような愛おしくなるようなセリフがたくさんあった。
そして劇中行われる、まだ何者でもない彼女たちの「自分の人生は自分で選択する」という行動宣言。…泣いたね。
もうひとつの魅力であるキャストについて。自然でとても上手いお芝居。
いや、それ以上に彼女たちがなにかをやってやろうなんていうイヤらしさがなく、ただそこにいるという存在感。
ももクロの事はほとんど知らなかったけど、彼女たちが多くの人々に愛される理由はわかった。
単に歌が上手いとかダンスが上手いとかだけじゃなくて、彼女たちの内面から溢れてくる生命力、周りの人たちを幸せな気持ちにする伝播力。そこなんだろうな。
最後に主演の百田夏菜子ちゃん。
凄いよ!百田夏菜子!
彼女は日本映画界における大発見だね!
もちろんアイドルとしての本業があって、そこでも素晴らしい仕事をしているのだとは思うけど、役者としての彼女も同年代トップクラスの女優さんたちと比較しても充分肩を並べる存在だと思う。
彼女の「佇まい」「表情」「言葉」「動き」すべてがこの映画を宝石のように輝かせてくれたのは間違いない。
ぜひまた映画に出てほしいな。