回想シーンでご飯3杯いける

スノーデンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

スノーデン(2016年製作の映画)
1.5
オリヴァー・ストーンはこの作品を通じて何を伝えたかったのだろう? 少し首を傾げてしまった。政治や戦争に関連する実話映画に対しては、興味よりも警戒心が強いので、本作もスノーデンに関する一連の動きが落ち着いたこのタイミングで観たし、あまり期待はしていなかったけれど、予想を更に下回る内容だった。

本作が公開された2017年初頭と言えば、スノーデンの告発はここ日本でも知られていたし、確かTVでもインタビューが流れていたはず。テロ等準備罪法案とも関連する事項だったので、日本でも賛否の両面から彼の告発が報じられていた。

そんな中で、本作品は既知の情報を淡々と映像化するばかりで、目新しい話が殆ど見当たらない。恋人とのエピソードはワイドショー・レベルだし、唯一映画的な展開を持たせた「ルービックキューブを使ってNSAからデータ持ち出し」のシーンは面白かったものの、監督自ら「事実ではない脚色」と種明かししており、何とも後味が悪い。

そんな中、スノーデンが憑依したかのようなジョセフ・ゴードン=レヴィットの演技には目を見張るものがある。だが、これもラストのご本人登場シーンでぶち壊し。しかもこのシーンって、映画用に本人を呼んで「演技させている」よね? まるでドッキリ番組のような趣味が悪い演出だし、ギャラを全額寄付して出演したというJGLに対して失礼過ぎる。そもそも、スノーデン本人が出演に協力しているという事は、彼にとって都合の悪い描写を基本的に含まない偏った作品である事を宣言したようなもので、国家による個人情報への介入というシリアスな題材を扱う映画として、根本的にアウトだと思う。

僕個人としてはスノーデンの行動を支持するスタンスでも、それと本作に対する評価は別物。この題材を全世界公開にこぎつけたオリヴァー・ストーンの熱意は素晴らしいけれど、映画の中身は、その熱意が空回りしている印象しか残らない。