こたつむり

東京ゴミ女のこたつむりのレビュー・感想・評価

東京ゴミ女(2000年製作の映画)
3.8
♪ あなたはあたしじゃなくちゃ
  真っ白なほっぺたに
  透き通る小さな雨垂れを落としてしまう

これはかなりの問題作ですね。
好きな男のゴミを漁るストーカーを淡泊な筆致で描いた物語。強烈な場面は皆無でも…字面で読むのと映像で観るのでは大きな違い。身体に拡がるのはガツンと殴られたような残響。

特に主演の中村麻美さんが見事な限り。
棒読みの台詞もあるのですが、異様に生々しいのです。見目麗しい女性がストーカーって、正直なところ説得力はないのですが…そんな違和感を抱くのも最初だけ。気付けば納得しているのです。彼女の歪さに。

また、そんな気持ちも解るんですよね。
彼女が恋しているのは現実に存在する男性でも、傷つく事を恐れて足踏みをしているうちに、頭の中で恋が愛に発展しちゃうのです。

確かにそれは正しい姿ではありません。
「うわー」と眉をしかめるのも理解できます。
でも、それを否定すればするほど、悲劇は生まれ、それがグルリと巡って自分の足元を揺らがせる…そんな可能性もあるわけで。自分は彼女と違う…そんな不遜なことは言えません。

ちなみに仕上げたのは廣木隆一監督。
話によるとピンク映画の巨匠だとか。それで爽やかながらもフェティッシュな香りがしたのでしょう。思うに、あの“隙間”は狙っているな。うん。そうに違いない。

まあ、そんなわけで。
カルト映画と呼ばれるに相応しい物語。
仕上がりが粗い部分(風の音がマイクに入っているとか)もありますからね。そういう部分も含めて“真っ当”ではないと思います。

ただ、その根底に流れるのは“愛”への疑問。
多様な価値観こそが人間の幅を広げる…そんな可能性を信じる向きにはオススメしたい傑作です。

あと、本当の目玉は柴咲コウさんの出演かも。
知名度が低い頃だから「五大陸制覇」なんて“えげつない”台詞もありますので…そんな視点で楽しむのもアリですね。我ながら下衆な視点だと思いますが…げっげっげ。


そして最後に、暮れの元気なご挨拶。
激動の2020年も残りわずかになりました。新型コロナウィルスの影響なのか、皆々様方の更新が絶えているのが気がかりですが、まずは今日。そして、明日。生き残って映画を楽しめますように。そして、素晴らしい作品が一本でも多く完成しますように。

本年はありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
良いお年を。
こたつむり

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