茶一郎

フォーカスの茶一郎のレビュー・感想・評価

フォーカス(2015年製作の映画)
3.0
『作り手側がフォーカス(視線)を盗む』

 「ラブアゲイン」監督コンビ監督・脚本、ウィル・スミス主演の一本。
ジャンル的には、ラブロマンス重視でちょっとしたお土産程度にコーンゲーム物の要素があるくらいです。「スティング」などを期待して行くとちょっとガッカリ。割とデートムービー向けの映画でした。(汚い言葉遣いがあるので要注意です)

 上述しましたがメインのストーリー進行は、一流詐欺師のウィル・スミスと詐欺師見習いのマーゴット・ロビーとのラブロマンスです。全体としては薄味も薄味で、『よしっ絶対に騙されないぞ!』と真剣に見ていると最後のオチに気づいてしまいガッカリしたりもしました。物語全体として大きな推進力が無いのは残念です。いっそのこと2部構成にせず、一つの大きなイベントでのコーンゲーム物とラブロマンスとの絡みでも良かったようにも思いますが……

 見せ場の集団スリはとても面白いのですが、肝心の主人公の詐欺の技術があまり描かれていないのは納得がいきません。詐欺師というより経営者としての才能の方があるように感じてしまいました。
加えてキャッチコピーにもある『視線を盗め』ですが、実際はカモがあまり視線を盗まれているように感じない。やはり、詐欺をしている側の主観のカットと第三者視点のカットの相違があった方が面白かったのではないかと思ってしまいました。後、よく論じられますが、映画で手品の類を見せるのには細心の注意が必要だとも再認識しました。

 結果として、騙しのための騙ししか見せられている気がせず、一番視線を盗まれているのは制御された情報とカットしか与えられない観客ということでした。面白くないわけではないと思うので、デートムービーとしては良いように思います。

 ちなみに同監督コンビ前作の「ラブアゲイン」の方がよりデートムービー向けだったりします……(小声)
茶一郎

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