こたつむり

原宿デニールのこたつむりのレビュー・感想・評価

原宿デニール(2015年製作の映画)
3.9
♪ 爆発する 僕のアムール
  君の心の扉を叩くのは
  いつも僕さって考えてる

『鳩の撃退法』のタカハタ秀太監督の作品。
なるほど。こういう“入り組んだ感じ”はお手の物なんですね。内田けんじ監督の名前を引き合いに出したくなるような群像劇でした。

但し、どんでん返しへの期待は禁物。
基本的には、原宿という街を象徴するかのように軽妙で洒脱な作品なので、ガツンと“裏切られる”ような濃ゆさはありません。でも、その“薄さ”が逆に功を奏していたと思います。

また、B級感溢れる配役も絶妙。
僕が見知っていたのは元キングオブコメディの今野浩喜さんくらいなんですけど、他の人たちも存在感はバッチリ。誰が主人公か分からないバランスも良かったです。

というか、主演は武田梨奈さんなんですね。
お名前だけは伺っていましたが、確かに“キック”の軌跡は美しく。色々な意味で思わず“見惚れて”しまいました。あのデニールの向こう側は…むふふ。

あと、タイトルの選択も見事な限り。
ガサツで無遠慮な生き方をしてきた人間には無縁な単語『デニール』が、まさしく細い糸のように物語を編んでいるのです。質実剛健なのにお洒落なタイトルじゃないですかね。

それと、時節柄に反応したのがウクライナ人のエピソード。本作の劇場公開は2015年なので、その頃から今に至る道筋があったのですね…うーん。複雑な気分になりますなあ。ただ、良い映画は意識せずとも“現実”を包括してしまうもの。本作もそうだと言う証左なのでしょう。

まあ、そんなわけで。
原宿を舞台にした軽妙な群像劇。
クレープを食べながら竹下通りを歩くような“ふんわり”とした気持ちで臨むが吉です。

あ。ただ、ひとつだけ注意点。
仄かに、あるいはハッキリと“エロス”を感じさせる場面がありますので、お子様との鑑賞は要注意。勿論、視聴制限に引っ掛かるような描写は無いんですが…「15号って何?」くらいならばともかく「ポテンシャルって何?」って訊かれたら…ねえ。

ちなみに僕のポテンシャルは低いです。
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