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シン・ゴジラのwhiskeyのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
3.8
「大臣、根拠のない楽観は禁物です」

なるほど、たしかに面白かった。

怪獣映画というよりパニック映画で、日本が直面した異常な自然災害(巨大不明生物災害)としてゴジラを位置づけている。しかもその危機に対応しようと奔走する政策決定者たちが主人公なので、ゴジラの登場シーン以外はほとんどが霞ヶ関の会議室が舞台だ。

大人が真面目に怪獣の話をしているので、一歩間違えば全編コントのような滑稽な映画になる可能性もあるだろうけど、緊迫感のある演出と俳優陣の熱演で、まったく退屈しなかった。むしろ映画ではなく、法廷劇のように舞台化してもいいぐらいだと思った。

政権中枢のリーダーシップの無さ、意思決定の遅さなどを指摘する声もあるけど、実際あんな感じだろうと思う。未曾有の危機にも動じず、強いカリスマ性とリーダーシップを発揮して、しかも自己犠牲的に振る舞うような人物が、いつも首相になるとは限らないし、もしいたとしても政策を決めるには国会で法案を通す必要がある。むしろ劇中の政治家も官僚も、随分真っ当に描かれていて、あれならゴジラが来ても何とかしてくれそうだ。その意味で本作は、政策決定者への批判ではなく、期待や願望が込められていると思った。(米国には解決できないことが、日本なら解決できるというメッセージとも取れる)

巨災対のメンバーはみんなよかった。特に市川実日子と高橋一生の掛け合いが面白い。津田寛治氏もなかなか魅力的な役どころ。高良健吾君は「フィッシュストーリー」の坊主頭が格好良かったが、今回はスーツ姿で美形さが際立っていた。

声がダンディな國村隼も自衛隊幹部の良い役で嬉しい(笑)噂の石原さとみは、確かに浮いてるキャラだった。でも現実に、ああいうタイプの高圧的な日系女性外交官がいたら、かなり嫌な感じだろうから、彼女がやることで見やすくなってるのかも。

できれば劇場の大画面で特撮映像を楽しむべきだったが、あいにく公開中には行けず、自宅のテレビ画面で鑑賞。でも映像よりも会話劇に注目できたので、結果的には良かったかもしれない。


追記
そうそう。僕はエヴァンゲリオンを1秒も観たことがないので、どこがこの映画と似てるとかまったくわからない。オマージュみたいなのがわかるとなお面白いのだろうが、楽しめたので問題ない。

追記2
本作は明らかに東日本大震災を想起させる内容になっている。米国で911の映画がつくりにくいように、日本でもこの題材はデリケートだ。「ゴジラ」に象徴させることで、この題材を扱うのはなるほどと思った。
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