鋼鉄隊長

シン・ゴジラの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
2.5
京都みなみ会館特撮オールナイト上映追っかけレビュー③

【あらすじ】
東京湾羽田沖にて異常事態発生。矢口内閣官房副長官は、その背景に巨大生物の存在を示唆するも一蹴されてしまう。しかし蒲田に謎の巨大生物が上陸した…。

 面白かった。ただ、手放しで褒めることは出来ない。
 良かった所は結構多い。まず序盤のタイトルカット。東宝のロゴを見て興奮したのは初めてかもしれない。そして上陸した第2形態(通称:蒲田くん)のインパクト。初めて観た時は思わず声が出た。顔が地面に近いので、逃げる人々と同一ショットに怪獣の全身が収まっているのが美しい。手は無かったが、あの構図は理想的な四足怪獣の撮り方である。これが観られただけでもすごく嬉しい。しかし一番良かったのは、やはり「ヤシオリ作戦(序盤の無人新幹線爆弾)」。『宇宙大戦争マーチ』を高らかに流してN700系新幹線が突っ込む姿は、思い出しただけでも興奮で涙が出る。今でも時々あの雄姿が見たくてDVDを見返すこともある。
 それなのに何が不満なのか。それは「ゴジラ」が出てきていないからだ。いや、確かにそれっぽいのは登場した。だがアレは「ゴジラ」と呼んで良いのか? 結局何がしたかったのか? アレに何らかのメッセージ性はあったか? アイツはただ前に向かって歩いていただけだ。知性どころか感情も感じさせない。血の気が通っているとは思えない、機械仕掛けの殺戮兵器。目なんてガラス細工みたいに無機質めいていて、下手なキグルミよりもよっぽど不気味で嘘くさい。あんなのゴジラでは無い。ゴジラはもっと感情豊かだ。『ゴジラ』(1954)は鳴き声に哀愁があった。『ゴジラの息子』(1967)の時の目は、丸っこくて優しかった。一転、『ゴジラ対ヘドラ』(1971)のラストで見せた睨み顔は怖かったし、『GMK』(2001)では終始鬼の形相だった。フルCGなのにどうして無表情なのか。『ゴジラ』(1984)では、唇だって動いていたのに…。
 しかも何を考えているのかさっぱりわからん。牧教授の魂が宿っているのなら、ちゃんと怒り狂え! 暴れ散らせ! B2爆撃機の攻撃を食らって、思い出したように放射熱線を吐いたって遅い。吐くなら10式戦車部隊に吐け。真正面から正々堂々と挑む自衛隊に対して応えてやれ。何で攻撃されてボーっとしてるんだ。怪獣としてのプライドを見せろ。
 そもそもアイツには神秘性が無さすぎる。「怪獣」とは読んで字のごとく「怪しい獣」だ。科学で太刀打ちできない魅力がそこにはある。それが遺伝子レベルまで丸裸にされて、挙句の果てにポンプ車で凝固剤流して撃退って、それで良いのか⁉ それではただの厄介な害獣ではないか。『GODZILLA』(1998)の時に「ゴジラがミサイルで死ぬわけないだろ!」と怒ったファンはどこへ行ってしまったのか。一昔前なら、メカゴジラやスーパーⅩと言った超兵器が相手でも敵わなかった。それがミサイルどころかポンプ車だ。無人在来線爆弾のワクワクを返せ‼ メーサー殺獣光線車くらい連れて来い!
 12年も待ったのだから、皆飢えていた。だから「ゴジラ復活」の興奮で、何を観ても満足していたのかもしれない。僕も封切り日に観た時は、「やっぱゴジラは良いなぁ。BGMが最高だ!」なんて思っていた。しかし家に帰ってハッとした。それって伊福部昭先生が凄いのであって、『シン・ゴジラ』はちっとも凄くないではないか。それ以降、観れば観るほど興奮が醒めてしまった。(とは言え劇場で7回は観たが)
 いろいろ愚痴ってしまったが、最後にもう一つだけ言わせて欲しい。
 何で鷺巣詩郎がアカデミー優秀音楽賞受賞してるんだ。54年版オリジナル・モノラル音源使ったなら、それは伊福部先生の功績だろうが!!!
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