原爆で亡くなった息子が、一人生き残った母親の元に亡霊となって現れるヒューマン・ドラマ。
予備知識無しで鑑賞したので、ニノの亡霊が現れた時、え?そういう話なのか…と驚いた。
冒頭の原爆投下シーンは、一瞬で全てを奪う恐怖と衝撃があった。この惨劇を目の当たりにしたら、脳裏に悲惨な光景が焼き付いて一生トラウマになるだろう…。
夫は結核で亡くなり、長男は戦地で死亡、そして次男の浩二を原爆で失い、一人ぼっちになってしまった伸子にとって亡霊として現れる息子は心の支えになったと思う。
そして、近所の人々や息子の生前の恋人だった町子が伸子の元にやってきたのも救い。
近年、近所付き合いと言えば必要最低限の挨拶程度で、極力関わらないようにする閉鎖的な暮らしがよくも悪くも増えている。
昭和という時代は、近隣と触れ合う温かな人情味があった。黒木華は、そんな「昭和」を生きる女性がよく似合う。
浩二を忘れられない町子の想いと、
町子の幸せを願う伸子の気持ちが切なかった。
しかし、130分の尺が長く感じた。
メインは亡霊の息子との会話と、町子との交流くらいで、他の部分が薄い。
吉永小百合と二宮和也の二人を山田洋次が撮ると、ハートフルなドラマが展開されてラストで余韻を残すと思っていた。
山田洋次は、こんなファンタジーも撮るんだね…ラスト、微妙。