『 これがここでの現実 それは否定できない 』
祖国が地獄になっても生まれ育った町を愛し続ける警察官と、暴力を美化、ギャングを英雄化しかねない歌を歌う男との物語。メキシコ麻薬戦争直下、最も治安の悪いシウダー・ファレスは地獄の黙示録状態だった。
邦題の「光と闇」の裏腹、『え?光どこ?』と『闇』しか見えない世紀末。道路に横たわる死体、あらゆるところに飛び散っている血痕、排水溝に流れる血。とても同じ地球に思えない。
劇中で『この国の痛み』という表現が出てくるが、見ていて『痛い、痛い』、まさに痛覚を刺激するドキュメンタリー。
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ネットに上がった一本の動画、それぞれが一人の命を脅かし、一人の作り手を鼓舞させ、そして痛みを受けた母を立ち上がらせる。異なる意味を持つ動画。
『闇』しか見えない冒頭から、わずかな『光』が見えて来る後半。それは、メキシコカルテルに同僚が一人ずつ殺されても決して犯罪捜査をやめない警察官の姿であり、地獄のようなこの場所から感化され文化を伝え続ける歌手の姿だった。
『喉がなくなるまで歌い続ける』と。
子供に死体を見せ、死体が警察官によって運ばせる過程を眺める父親とその子供。
『この子らには本当のことを教える』
『これがここでの現実。それは否定できない』
凄惨な真実を子供に教える様子は、映画によってメキシコの真実を世界に伝える今作と重なる。
ホント、日本に生まれて良かったですよ……