ユタ

ユタの感想・レビュー

恋人たち(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます。

「こんなクソみたいな国でオリンピックとかやってなんか意味あるんすかね、それより人殺していい法律とかできないっすかね」


クソみたいな世の中で希望を全て失って、
もう人生を終わらせてしまおうかと思った時、
”かろうじてこの世の中に僕たちを引き止めてくれるもの”って何だろう?


その答えがこの映画に描かれていると思う。


ほんとに何気ない事だけど、缶コーヒーの上に誰かが置いてくれた一個のアメちゃんになんだか救われる日もある。

”あなたともっと話がしたい”
という言葉をかけてくれる人がもしいなかったら?

人を殺すのも人だし、
救うのもまた人だ。
そんなの口に出すことも恥ずかしいくらい誰もがわかりきっていることだけど、
それを、こんなにストレートに渾身の力を込めて描こうという人は意外と少ない。

いまの日本で間違いなく、一番描くべきテーマから逃げずに、真正面から描き切った橋口監督を尊敬する。




また、
ゲイの弁護士とある悲劇的な過去を持つ作業員、二人の主人公が対峙するシーンを見て感じたのだけど、
この映画は「物語の外側に想像力を働かせよう」ということも言っている気がした。

絶望の淵にいる作業員にとっては冷徹で血も涙もない弁護士にしか見えないけど、弁護士サイドにも”物語”がある事を私たちは知っている。だから単純な悪人として弁護士を見れない。

これは見方を変えれば、この映画に語られていない「物語の外側」を想像する事の大切さも教えてくれているとも言える。
(例えば保険証の申請で作業員を邪険に扱うあの区役所の職員も、この映画の中では描かれていない”物語”があるはず)




映画や音楽で人は救えない、とか簡単に言う人が嫌いだ。
それは「恋人たち」のような映画や、色々な芸術に自分は救われてきたから。

この映画を見れてよかった。