あきらっち

恋人たちのあきらっちのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
3.5
誰かの苦悩や孤独を
他の誰かが全てを理解する事なんて、
出来る筈もない。

愛する者を失う事自体は珍しい事ではないけれど、同じシチュエーションなんて一つもなく、当事者のみぞ知る、怒り、苦しみ、悲しみ…

平穏な世界にあって傍から見れば滑稽なほどの満たされぬ孤独や、マイノリティであることを秘めた孤独も、また然り。


“恋人たち”

“恋”の旧漢字は“戀”
その語源は、
「絲+言(ことば)」+「心」
もつれた糸にケジメをつけようとしても容易に別けられない事を表し、下に心を配したこの漢字は、心が乱れて思い切りがつかない事を表す、と知った。

“恋人たち”=“心が乱れて思い切りがつかない人たち”

ドキドキや締め付けられるような気持ちばかりが“恋”ではなく、登場人物達のように自分ではどうしようもなく絡まり行き場の無い心を抱えて生きる人たちもまた“恋人たち”なんだとしみじみ思った。


タイトルに添えられた
「それでも人は、生きていく」
という重いフレーズ。

気分の上がる映画ではない。
だがここに描かれているのは、私達の身の周りにある筈の陽の当たらないリアルに違いない。

アツシの上司の人柄や言葉、
アツシがラストに見上げた空の青さ、
そしてエンドロールのラストに、
一片の救いを見た。


※アツシを演じた篠原篤を始め、決して有名ではないキャスト達の強烈な個性が光る本作。
ストーリーに好きも嫌いもなく、明るい表舞台ではない現代社会の側面を描いた橋口監督のメッセージが胸に刺さった。
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