Tラモーン

仁義なき戦いのTラモーンのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
4.1
昨日観た『県警対組織暴力』がめちゃくちゃ面白かったので今日も深作欣二×菅原文太×松方弘樹で行きましょう。


戦後間もない広島・呉。復員したばかりの広能(菅原文太)は喧嘩に巻き込まれた山守組員の友人のため、日本刀を振り回す暴漢を射殺する。服役した刑務所で土居組の若頭・若杉(梅宮辰夫)と盃を交わし兄弟分となり、彼の出獄を手伝った働きで保釈され、お勤めと土居組との友好関係から山守組に迎え入れられる。


50年前の映画とは思えないくらいマジで面白い。戦後の混乱の中で極道者としてしか生きられなかった若者たちのリアルな生き様と、激動の時代を凄まじいテンションで描き切った名作。

きのこ雲と真っ赤な字のタイトルバック、そしてあのテーマ曲で始まる強烈すぎるオープニング。
本当に戦後の闇市のような人混みの中でババっと紹介される主要な登場人物たち。
「え、誰が誰…?」なんて心配する必要は一切なし。少し観進めればキャストたちの強烈な顔面の濃さですぐ覚えるから。

朴訥ながら真っ直ぐで肝の据わった男・広能。米兵に襲われる女性を助け、ヤクザでもないのに友人のためにピストルを取る。

"おい、やったど…!"

刑務所で出会った若杉と兄弟分になるとこもカッコいいのよ!

"盃がないけん、これで腕切って血すすろうや"

この日、極道として生きることを決めた広能は最後まで仁義を守り抜く。


時代の流れ、裏切り裏切られの組同士の抗争。ただ単に力だけで生きてきたヤクザたちが生き延びるために表社会でビジネスを起こし、組同士の対立はより複雑なものになっていく。
信用できない親分、そんな親分に不満を抱き離反する兄弟分、自分が生き残るために利害関係ばかりの裏切り合いばかりのヤクザ社会。
そんな世界をリアルかつバイオレンスに、テンポよくエンタメに仕上げた見事なまでの99分。

広能だけはとにかく真っ直ぐなんだよ。

"一旦口に出したんじゃけぇ、やらなあかんよ"
"死刑になった言うても、極道しとったら、そら当たり前のことですけん"
"おどれの手はもう汚れとるんじゃ。黙って早よやれや"

汚い手を使って仲間を出し抜くまさに「仁義なき戦い」の中にあって広能は、あの盃を交わした日から極道として行き、極道として死ぬ覚悟が常にあったのだ。

"狙われるもんより狙うもんのほうが強いんじゃ"

菅原文太マジでカッコいい…。
なんなんだあの強烈なラストシーン。敵となってしまった旧友。そしてそう仕向けた卑怯なヤクザ社会。

"弾はまだ残っとるがよ"

お前を殺すことができるという威嚇でありながら、自分にはまだ極道としての仁義が残っているという宣言でもあるかのようなラストシーン。渋すぎる。


菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、田中邦衛…その他みなさんとにかく顔が強すぎるのよ。調べたら撮影当時みんなだいたい30代て…。嘘やろ。どんだけ貫禄あんねん。
殴られたり、撃たれたり、刺されたりしたときの表情もめちゃくちゃ生々しいんだよな。やっぱりレジェンド俳優ってちゃんとレジェンドなんだよな。

登場人物が死ぬとババーンって感じで出てくる〇〇〇〇死亡ってテロップも昭和っぽくていい。

あのテーマ曲も今まではギターウルフの登場SEくらいにしか思ってなかったけど、緊張感と昭和感と迫力とあっていいな。
改めてギターウルフの音楽性とも相性バッチリだな(ギターウルフに音楽性なんてものがあるのかどうかはさておき※褒めてる)。

こりゃ続編も観ないとな…。
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