しゃび

ネオン・デーモンのしゃびのレビュー・感想・評価

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
4.5
「外面的な世界」と「内面的な世界」を、あくまで映像と音楽のみで表現する。

この監督の映画に対する姿勢はとてもひたむきだ。ひたむきであるが故に、自ずと表現も極端になる。



「人は言われたことを信じるものよ。」

そう、他人に言われた事に自らの感覚が左右されるのはよくあること。
能動的にそう感じたと思っていても、実は周囲からの刷り込みによって、感覚が作り上げられている場合も多い。

それは、自分自身に対する認識や評価に関しても全く同じだ。

「ジョージアの空は大きい。地上の自分が小さく見えるの。」

なんて可愛いことを言っている主人公の変貌ぶりは、その確たる証拠である。


ジョージアの町から一人で上京してきた幼気な少女の内面の変貌を描くのに、ファッション業界という舞台は最適だ。
内面の描写で極端なことをやっても、同じように外面の描写でも極端なことができるので、両輪のバランスが崩れない。


彼女の内面を表現していると思われる安モーテル。
あっさりと蹴やぶられるドア。
不意打ちのように登場する山猫。
一歩も動くことができないキアヌさん。

内面に山猫侵入させてしまったことは、彼女の未来をどう変えるのか。



できるだけ言葉を使わず、あくまで見える化して内面を表現しているため、メタ描写が多い。
そのため例えば、多用される三角形や鏡に書かれた絵など、一回観ただけではどういう意味なのかよく分からないものもある。

でも話自体はいたってシンプルで、意味深な描写はあくまでプラスαの部分で使われている。
そのため、たまーにある無意味に分かりづらい不愉快な映画にはなっていない。


何より、世界が美しい。
人が美しい。

『ドライヴ』と同様クリフ・マルティネスとともに送られる映像と音楽の饗宴は、既視感のない個性豊かな映画空間を形成している。

久しぶりに冒頭から画面に釘付けになった。


『ドライヴ』『ブロンソン』に続いて、レフンは3作目の視聴。他の2作品もとても良かったけど、今のところこれが一番好きかな。

映像的に唸らせる部分がすごく多くて、本当にお腹いっぱいな映画でした。



ネタバレ↓

前半、パーティのショーのシーン。

これで一気に心を持ってかれた。クラブのシーンでよくある光の明滅を、こういう風に使うのかと心底驚かされた。

侵入者を山猫にするセンスといい、『ドライヴ』
や『ブロンソン』以上の新鮮さが、映画に満ち満ちていて気持ちがいい。


手元には『オンリーゴッド』『ヴァルハラライジング』『ブリーダー』の3本…

さてどういう順番でいこうか。
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