ぬーたん

追憶の森のぬーたんのレビュー・感想・評価

追憶の森(2015年製作の映画)
3.7
マシュー・マコノヒーと渡辺謙。
日本が舞台。
と来たら観なきゃ。と思ったものの評判がイマイチだった今作。
マコノヒーが演じるには地味な役柄。
見かけもごく普通の人だしダサい感じのメガネと服装。
やっぱマコノヒーは普通でない特殊な役でこそ活きるっていうものじゃ?
と思って観たけど、上手い俳優は普通人も上手かったのだ。
もったいないけど、マコノヒーが演じたからこそ最後まで飽きなかったような気もする。
テレビドラマ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』の刑事役も最初はこの役にマコノヒーもったいないと思ったが、ラストで大いに泣かされ、流石の演技に酔った。
そういうマコちゃんの作品の選び方も、何か好感度アップだよね。
渡辺謙は、『西郷どん』でも主役の鈴木亮平を食う演技で、良く通る声がまた大きくて、馬に乗って登場しセリフを言った途端、謙さんワールドになっちゃうのよ。
ようやく亮平君の演技を楽しめそうになったわ。頑張れ西郷どん!
で、今や世界のケン・ワタナベですよ。
自信が現れる演技で、マコノヒーとの全編ほぼ2人の演技合戦が見ものになっていた。
やはりラストはマコノヒーにもっていかれたけど。
ナオミ・ワッツも綺麗だし、頭を丸めて好演でした。

さて、設定はやや無理やりっぽく、その点で感情移入が難しくなってしまったのが残念。
マコノヒー演じるアーサーが日本をチョイスした理由として、別の要因を入れた方が自然だったかも。
例えば、住んでたとかハネムーンで来たとか。
また、渡辺謙演じるタクミがやけに流暢な英語を話し、彼の家族設定も、日本人ならおや?と思う違和感あり、外国人なら分からないことでしょうが。
逆に、青木ヶ原という樹海については日本人なら理解出来ても、外国人は富士山のイメージと結び付けて自殺名所と納得する人は少ないだろうと思う。
あらゆる伏線がどうも万国共通で理解できないのが、ラストでどう捉えられて感動に繋がるかの分かれ目でしょう。

夜の深い森の中という映像が、とても観辛く、目が疲れた。
森の中で景色も単調で変化がない。
日本でロケしたわけでないので、日本の他の景色+マコノヒーという画もなく、ちょっと残念。
『イントゥ・ザ・ワールド』という映画をふと思い出した。
あちらは実話だし、森の中で生活していたから全く違う内容ではあるけれど、似ている部分があった。
生きる事への絶望、全てからの逃避。
一大決心のもと、死を覚悟して行動しても、何かをきっかけに人はその決意を翻すこともある。
それで戻れれば良いけれど。
来た道だから戻れるとは限らない。
人生や死を考えさせられる、静かな佳作。
ぬーたん

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