こたつむり

エンドレス・ポエトリーのこたつむりのレビュー・感想・評価

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)
4.2
アレハンドロ・ホドロスキーの奇妙な冒険
        第二部 その誇り高き血統

本作は『リアリティのダンス』の続編。
主人公《アレハンドロ》が反抗期を経て、独り立ちするまでを描いた作品です。だから、親目線で鑑賞していると胸が痛くなりました。親にとって子供は何歳になっても子供。腕の中で「だぁだぁ」言っていた頃を忘れられないのです。

しかし、本作が素晴らしいのは。
それを88歳になった監督さんの視点で包み込んでいること。だから、親子共々に身を切るような“痛み”も昇華した形になっているのです。いやぁ。歳を取るって悪いことじゃないのですね。うん。そのメッセージがビンビンに伝わってきましたよ。

また、監督さん独特の表現も序盤から衝撃的。
舞台は20世紀のサンディエゴですが、奇抜で独創的で思わず頷いてしまうほどのパワーに満ちた“再現方法”はリアリティとは別次元。もうね。感嘆のため息しか出ません。その後も「うは」とか「おほ」とか言いたくなるほどの演出は見事な限り。ニヤニヤが止まらないのです。

ただ、その中でひとつだけ気になったのが。
雑踏のざわめきが耳に残ったこと。あれは故意なのか、それとも音を拾い過ぎたのか…ちょっと集中力を削がれる結果に繋がったので残念でした。

しかし、そんな指摘は。
ホドロフスキー監督の新作に触れる歓びの前では些細なこと。しかも、本作はファンからの出資(クラウドファンディング)で製作されていますからね。ファンによるファンのための作品に安易な批判なんて出来ませんよ。

また、その熱意は。
配給会社のスタッフからも感じました。本作は主人公の“てぃむてぃむ”が縦横無尽に映るのですが、それを無粋な修正で損なわないように尽力されているのです。やはり、監督さんの意図を真正面から受け止めることが“製作者に敬意を払う”こと。たかが“てぃむてぃむ”されど“てぃむてぃむ”なのです。

だから、本作を鑑賞するならば。
完全無修正版(R-18)がおススメなのですが、環境に恵まれなければR-15でも良いと思います。シネコンの大画面でホドロフスキー監督の作品を鑑賞する…というのも乙ですしね。勿論、DVD発売まで待って、自宅で思う存分味わうのもアリでしょう。何処で観てもホドロフスキーはホドロフスキー。些細な違いに拘るのは本質を見失っていると思います。

まあ、そんなわけで。
作品内外ともに素晴らしい話題が尽きないのですが、更に喜ばしいのが、続編の構想があるということ。パンフレットによると「五部構想」だそうですよ。まだまだ楽しみが続くなんて最高ですね。製作費に困ることがあるならば…次は僕も出したいと思います。

… 100ホドロフスキーくらいで良いですか?
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