ぼぶ

アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たちのぼぶのレビュー・感想・評価

4.2
どんどん面白くなる系。
ベン・キングズレーが出ていて、閉鎖的な自然の要塞になってる精神病棟が舞台ということで、『シャッターアイランド』感は出ているけど、こちらはこちらで面白い。
“顔のない患者”ってのが、良い味を出している。

閉鎖的な雪山の、かなり山奥にある巨大な精神病棟。
患者も世の中的に地位や権威がある家系の良家の人ばかりが集まっている。
だからかはわからないが、従来の高圧的で実験的な非人道的治療法ではなく、音楽やダンス、それぞれの幸せに沿った自由度の高い治療を用いてるのが特徴で、基本患者もみんな楽しそう。
そんなところにオクスフォード大出身の、精神科医見習いが、実地研修に来る。
あれ?手紙届いてない?でも、雪深い山奥だから遅れてることもあるし…ということで研修開始。
美人のピアノ弾けるお姉さんの患者とか、馬と信じ込んでる患者とか色んな人と出会いつつ…でも何だか様子が変で気にかかるな、カーンカーンって音も地下の方からするし…というところから転がり出すお話。

「精神科医を目指すなら、物事は目に見えるもの全てを信じてはダメ、その半分くらいを信じよう」という冒頭でのメッセージが、ずーっと劇中もよぎり続ける。
果たして、正常って、異常って何なのだろうか。

エドガー・アラン・ポーが1845年に発表した短編小説のりタール博士とフェザー教授の療法」を原作にしてるだけあって、この当時の時代の感じや、女性の立場の弱さ、精神病への偏見、精神科医の傲慢さや当時の非道な治療などの風刺もきいている。

ストーリーにはネタバレになるとアレなのであまり触れないが、
ご飯を食べないお婆ちゃんへの接し方のところで、イライザの目に見えて惹かれていく演技が素晴らしかった。
あ、あと別の場面での君にイカレてるって最高のセリフだなと。

ミステリー的な要素が強いものの、独特なアングルのカットや、しっかりアクションがあったり、セットをしっかり使用してる感もあって、大作感も感じたし、ちゃんとオチもチェックメイトしてて銭形のとっつぁん感あって良かった。
イライザも年齢に見えない美しさ。

改めて、こうしてみると、いつの世も変わらずに、誰しもマトモな人なんていないのかもしれない。

“ミッキー・フィン“っていう意味と、イタリアは晴れてて明るいってことも学べる一作。
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