こたつむり

ギャラクシー街道のこたつむりのレビュー・感想・評価

ギャラクシー街道(2015年製作の映画)
3.6
★ 娯楽とはッ!楽しんだ者勝ちの餓鬼道ッ!

駄作、凡作、愚作…。
ありとあらゆる酷評の嵐に耐え忍んでいる作品。僕も睡魔に襲われる覚悟で臨みましたが…え。あれ?思っていたよりも面白いですよ?僕の価値観はヤバいのでしょうか。

この理由を考えてみるに。
1.映画に対して過度の幻想を抱いていない
2.三谷幸喜監督に過度の期待を抱いていない
3.本作よりも酷い創作物に触れたことがある
この三点を思いつきました。

特に1は大きなポイントだと思います。
僕には「映画は斯く在るべし」というこだわりが少ないので、安っぽくても、会話主体の密室劇でも、映像美とやらに拘らなくても、日本産でも外国産でも気にしないのです。製作者の気持ちが大切なのです。

そして、本作から連想したのは筒井康隆先生の『虚構船団』。これはイタチと文房具の戦争を描いた小説なのですが、当時としては先鋭的であり、喧々諤々の論争を生んだ作品。まるで、本作も同じ道を歩んでいる気がしました。

つまり、三谷幸喜監督は攻め過ぎたのですよ。
低予算のように見えるのも、主人公に魅力を感じづらいのも、下ネタが際立っているのも…既存の価値観にケンカを売った結果。劇中でも「固定観念に囚われるな」とありますからね。舞台設定で宇宙を選んだ時点で“前向きに死ぬ”覚悟があるのでしょう。

だから、現代では評価されなくても。
遠い未来…それこそ実際にギャラクシー街道が作られる頃に鑑賞すれば…違う感慨が生まれるかもしれません。何しろ、世の中は諸行無常。不変の価値観などありませんからね。

身近な例で言えば、昔はスーツ姿でデイパックを背負っていると「子供っぽい」と揶揄されましたが、今や猫も杓子もブリーフケースを背負う時代(やや誇張表現)。本作が評価される未来もあるはずです。たぶん。あるいは。きっと。おそらく。

まあ、そんなわけで。
俳優さんの演技や、切れ味鋭い物語や、目も麗しい映像などに期待するのではなく、風車に挑むドン・キホーテを応援する気持ちで臨む作品。

だから、鑑賞する際は、期待値をギリギリまで低くし(地面を抉るくらいに)、お笑い番組と同レベルの美術を覚悟したほうが良いでしょう。あ。でも、最後に流れる唄だけは誰にでもオススメできますよ。
こたつむり

こたつむり