ゼロ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破のゼロのレビュー・感想・評価

4.4
少年少女たちのビルドゥングスロマン。

2009年から『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』4部作の第2作目。前作の『序 』はTVアニメの映像や音楽を再構築した作品であるのに対し、本作は大筋の流れは似ているものの、新キャラの登場や展開の変化など見応えるのある作品になっています。

先に結論としては、ファンが望んでいたエヴァンゲリオンが、ここにあると言っても過言ではないくらい王道な物語に変化していました。

内容としては、TVシリーズの第八話『アスカ、来日』から第拾九話『男の戰い』までを描いています。劇中では、第3・第7・第8・第9・第10使徒と戦うことになるので、エヴァでのアクションが多く、盛り上がります。特にTVシリーズ最強の使徒であるゼルエルと似たような位置にいる第10使徒のアクションは、絶望と狂気が魅せれられ、最高でした。

またパイロットであるシンジくんにもフォーカスされ、シンジが料理を作れば、レイが料理を作り、負けじとアスカも奮闘を始めます。ちょっとした恋愛模様もあり、レイがシンジのことをぽかぽかすると発言したのは、この話はボーイミーツガールでもあったなと感じます。

新キャラの真希波・マリ・イラストリアスは、存在は不明ですが、何も考えてないように見える明るい性格の人物は、本作では異質でありました。この先、どう転がっていくのか楽しみであります。

そして、ファンが望んでいたエヴァンゲリオンと感じていたのは、シンジが好きな綾波レイを助ける展開になっていたからです。TVシリーズのシンジは、「逃げちゃダメだ」と葛藤することが多く、事なかれ主義でした。

ただ本作のシンジは、周りに料理を振る舞ったり、好きな相手に対して感情を剝き出しにて行動する人間へと変わりました。シンジという少年が周りの環境を受け入れ、好きな女の子を守りに行くという成長した姿を見られたのは、心が熱くなるものでした。

終盤の展開を観て、本作はTVシリーズの焼き直しではないのだなと感じました。

他に赤い海の存在やゲンドウが手に入れたのはアダムではなく、ネブカドネザルの鍵など細かな設定の違いもありました。全ての謎が明かされるシリーズではありませんが、今後の展開に絡んでくるのでしょう。

最後に、レイを救ったシンジ。ネルフの大人たちが「サードインパクトが起きる」、「すべてはここからだ」とわけわからないことを発言していますが、少年少女たちが成長し、幸せになって欲しい。本作品は、その可能性がありそうな終わり方をしていたのが希望でした。

最初から最後までワクワクドキドキしながら楽しめたエンタメ作品でした。
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