ゼロ

すずめの戸締まりのゼロのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.3
扉の向こうには、すべての時間があった―

2016年に「君の名は。」、2019年に「天気の子」、そして2022年に本作が公開されました。どの作品にも共通していえるのは、現実を超越している映像としての美しさに、RADWIMPSが奏でる音楽の繊細さ、そして作品の根幹には「災害」があることが挙げられます。今作は、2011年にあった「東日本大震災」を新海誠監督が真正面から描いていました。

物語としては、宮崎県の静かな町で暮らす17歳の女子高校生・岩戸 鈴芽が、青年・宗像 草太と登校中にすれ違う。途中で草太を追いかけると、廃墟の中に扉があった。そこは現実には思えない景色が広がっていた…というもの。

主人公・鈴芽が、宮崎県から岩手県までを「閉じ師」として各地を巡るロードムービー。ファンタジー作品なので、草太が喋る椅子になったり、ダイジンという猫が喋ったり、ミミズという化け物と戦います。

全体的な展開をみると、少年マンガのような雰囲気はありました。もしくは「セカイ系」と呼ばれるような作品でした。ミミズのメタファーは「災害」であり、携帯電話でやたら流れる緊急速報を見ると嫌でも「災害」を意識してしまいますが。そういう意味では、エンタメとして振り切っている部分はあります。

ファンタジーとしてみないとポカンとしてしまう展開がかあり、また鈴芽が草太に恋するっていうのも理解はできないのですが、本題は終盤に語られる鈴芽の言葉なのでしょう。たぶん草太は、草太じゃなく別の男性だったとしても、作品として成り立ってしまうキャラの弱さがありました。

2011年に大きな「災害」に見舞われ、その後も日本は「災害」の影響は出ています。人によっては、大切な人を失ったり、自分の居場所を無くしたり、全てを投げうることもあったかもしれません。それでも、あの頃の自分に、「どんなことがあっても幸せにやってるよ」と言える自分でいたい。悲しみを乗り越えるのは、未来の自分なのではないでしょうか。

またこれまで携わってきたRADWIMPSは影を潜めていました。劇中歌を何曲を提供していたわけではなかったので、そこは物足りなさを感じていました。もしくは過去2作に比べて、インパクトが弱く感じてしまったのは、センシティブなことを題材にしてるから、振り切って描けなかった点があったのかもしれません。

伝えたいメッセージと題材が根幹にあり、そこに新海誠監督らしさとエンタメを取り入れた作品となっていました。
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