ゼロ

かがみの孤城のゼロのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.0
きっと、”人生の宝物”になる。

辻村深月さんによる同名小説をアニメーション映画にしたもの。原作の単行本が558ページもあるのに、116分に見事にまとめたと言える。

原作既読である感想としては、作品として大事なメッセージや伏線が回収されるラストシーンに力を入れている。構成としては素晴らしいと思ったが、映画で描かれなかった安西こころの機微やかがみの孤城で出会う仲間の触れ合いがもっと観たかった…というのが素直な感想。

原作でも不登校の少女である安西こころが、学校にいけない葛藤があり、かがみの孤城でゲームをしていることに、大きな意味はなかった。ただ世界を拒絶していた女の子が、かがみの孤城で仲間と出会い、自分の悩みと向き合うのには、もう少し丁寧な心の描写が必要だった…と思えてしまったため、映画の前半部分は感情移入できなかった。

原作も伏線回収が始める後半までは退屈な部分が多かったので、ラストを手厚く描写するのは英断だったと思います。劇場版という尺を考えると、抑えるところは抑えていたので、これ以上のものを求めるのは酷なのかもしれない。

また声優に関していえば、全体的に素朴な感じで演じる人が多かっただけに、オオカミさま役の芦田愛菜さんが、ハキハキ喋るので浮いていたように感じました。本来であれば、下手な演技ではなかったが、主要キャストがマサムネ役の高山みなみさん以外、淡白な演技だったので、そこはその雰囲気に合った人でも良かったのかも。

映画版が響いた人は、是非とも原作の小説も読んでみましょう!と薦めたくなる作品でした。
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