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仁義なき戦い 頂上作戦のTラモーンのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 頂上作戦(1974年製作の映画)
4.0
血生臭いドンパチとヤクザたちの腹の探り合い、そして菅原文太の漢気に観るのをやめられないッッッッッッ!


昭和38年。東京オリンピックを翌年に控え高度経済成長真っ只中にあって市民社会の目は暴力団に対して厳しいものとなっていた。しかし、山守組を破門された広能組とそれと手を組んだ打本組の抗争は、神戸二大勢力の神和会vs明石組の代理戦争の様相を呈し、激化の一途を進んでいた。


戦後の混迷を抜け急激な高度経済成長を迎えた社会の中で、かつては必要悪として存在を許容されていたヤクザたちが次第に秩序によって追い込まれていく様と、相も変わらず裏切りあいと怒鳴り合い、そして激しい抗争を描いた4作目。

元々は村岡組、山守組、打本組くらいだったのにそれぞれの幹部だった若えのがみんな自分の組持ち出したり、抗争が広島全域にわたったせいでとにかく登場する組が多い!集中して観てないと、誰がどこの組員でどこの組の系列かわからなくなる…笑。

なのにやっぱりめちゃくちゃ面白い!
今作では義西会の若頭・藤田として松方弘樹が復帰。顔面鋭すぎ。

警察の監視の目が厳しくなる中で、幹部連中が無駄な手出しを避け政治的に動く中で、血気盛んな各組の若い奴らがウズウズしてるの過渡期って感じで熱い。

山守(金子信雄)は卑怯者だし、武田(小林旭)はクールに抑えてるし、打本(加藤武)はヘタレときた中で広能(菅原文太)だけは昔気質のヤクザを貫いてて渋い。

"広島の喧嘩言うたらとるかとられるかの二つしかあらせんので"
"この場へ来て仁義もクソもあるかい"

殺された若い組員の報復のために自分自身で敵陣に乗り込もうとするし、そんな親父さんを騙して道中置き去りにして自分たちだけで敵陣に乗り込む広能組の若えのもカッコいい。

しかし警察や社会の締め付けの中で、激しい抗争が迎える終焉はとにかく虚しい。何ひとつ実りのなかった抗争後の裁判所で広能と武田が会話を交わすラストシーンはめちゃくちゃ名場面。

"これからは政治結社にでも変わらんとやっていけんわい"
"もうワシらの時代は終いでい"

粉雪が舞い、寒さが画面から伝わってくるような裁判所の廊下で、雪駄を履かされ震える2人の哀愁が時代の移ろいと虚無感をひしひしと訴えてくる。


これで完結を目指して作られたという本作。いよいよ次の完結編はどんな感じなんだろう。
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