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父を探してのyunumataのネタバレレビュー・内容・結末

父を探して(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ここ5年間でアニメーション最大の収穫、とさえ言えそうな、あまりにも素晴らしいグラフィック。止め絵でも充分に驚かされるけれど、これがこのクオリティのまま、ざらっとした質感も色彩もそのままに80分近くも展開し続けるのだから、これを無二の体験と呼ばずに何と言い表せばよいのだろう。ストーリーもよく練られていて、(絵本のような世界観に浸ろうとさせないほどに)強烈な、文字通り度肝を抜かれるような、頭蓋骨ごと吹き飛ばされるようなスゴい展開が何度も、何度もあって、本当に驚かされる。強い強い、あまりにも強い意志のような、熱烈なメッセージ性に誰しもが撃ち抜かれてしまうと思う。そして音楽もすっばらしい……。ほんとに音楽がいい。耳に残って離れない、父のメロディ、母の歌声、そして人々の叫び。
けれども、ラスト……本当に最後の最後だけ、この映画の眼差しが「未来」を向いていないことだけが気になってしまった。ネタバレなしに書くことが難しいんだけれど、ここまで現在を強すぎるほどの意思をもって描いているのに、最後の着地点がこれだと「過去」なんですよね……。監督としてはきっと、これをこのままで描かざるを得なかったのだろうけれど、もう経済発展もし尽してしまった日本に生まれたからか、少し、どうなのかな、って思ってしまったナ。だから、今のタイとかインドとか、それこそ中国とかで公開されると、日本以上に爆発的な反響と共感がある作品なのかもしれない。“ブラジル”の叫び、って感じです。……でも、いまの中国で公開するには、ちょっとポリティカル過ぎるかもしれないカナ。
『父を探して』という邦題は、ちょっとミスリードなんだけれど、「そうか、ずっと彼は父を探し続けていたんだな……」って気が付いた途端に涙腺が決壊するので、可能なら二回観るといい映画かもしれないです。よかったー。

試写(2016.02)
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