emily

父を探してのemilyのレビュー・感想・評価

父を探して(2013年製作の映画)
4.0
少年の父親がある日電車に乗って出稼ぎに行ってしまう。父をなんとか連れ戻そうと、少年は旅へ・・そこは未知の世界。農民の苦しい現実があり、国際都市が開ける。父親の奏でていたフルートの音玉だけを頼りに、その現実をのぞき見ながら、旅を続けていく。

冒頭は小さいものが広がっていき、そこからふわっと世界が異次元の世界へどっぷりと張り込めるような演出が施されており、一気に世界が開ける。
一本の棒のような人物に対して、鮮やかな子供がクレパスで書いたような、それでいて緻密に計算された、2次元、3次元空間を色を重ねて見せる。壮大でありながら、遊び心があって、自由なのに、しっかり計算された世界観が混ざり合っている。

同じ顔をした人たち、同じ動作の繰り返し、無から広がる何か、何かから広がる無。棒のような薄っぺらい、個性を持たない人集合体・・父集合体。特別な人ではなく、複数同じような人たちがいる中の一人という立ち位置だろうか。
ぺらぺらの人・・社会におけるペラペラの人はなにの影響を与えることなく、ただ無常にそこにいるだけ。
少年の目により広がる広大な世界は、その広がりが大きくなればなるほど、目が肥えればこえるほど、そこには何もできないむなしいまでの現実しかない。
セリフもほぼなく、1人間の人生の虚しさを描いている。ヒロインがいて、何かに向かうわけでもなく、苦難を乗り越える訳でもなく、特別なメッセージ性があるようにも感じない。でもそれがこの作品に込められたメッセージで、ほかのアニメ作品とは全く違うアプローチが面白い
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