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ラ・ラ・ランドのfujisanのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.4
観るたびに新しい発見がある映画。そして、大好きな映画です。

オールタイム・フェイバリットの一本。観過ぎてて逆にレビューが書きにくい作品でもありました。ブルーレイもサントラも持ってるのですが、定期的にリバイバル上映される作品でもあるので、今回も劇場鑑賞してきました。

本作は映画オタクのデイミアン・チャゼル監督らしく、「シェルブールの雨傘」、「ロシュフォールの恋人たち」、「巴里のアメリカ人」など、様々な名作のオマージュ作品でもあるのですが、そういったトリビア的な楽しみ方よりも、音楽とダンスとストーリーに没入して観るほうが絶対に楽しいと思う作品でもあります。
(解説については、パンフレットの町山さんの解説以上のものはないかと)

ただ、意外に評価が高くない作品でもあって、『ラ・ラ・ランドが好き』って言うと、『えー?』っていう反応をされることも割とある作品なのですね。理由を聞くと、『終わり方が好きじゃない』 っていう意見が多いです。

言われてみれば私も最初に観たときはたしかにそう思った記憶があるのですが、観るたびに感想が変わる作品でもあって、今では、これこそがハッピーエンドだよなーって思っています。


(今さらな旧作ではありますが、以下はネタバレ要素を含みます)


それはエンディングのシーンですね。
この映画では2パターンの描かれ方があって、一つは現実のエンディングと、もう一つは”if(もしも~だったら)”の回想シーンになっていました。

現実のエンディングでは、ミア(エマ・ストーン)は大女優に、セブ(ライアン・ゴズリング)も、ジャズレストランを経営する夢を叶えています。ただ、ミアとセブは別れてしまっており、ミアは別の男性と結婚しています。つまり、愛よりも夢を取った形。

もう一つは、ミアとセブが結婚し、ミアは大女優になっているものの、セブは主夫のような形でミアをサポートしており、二人は結ばれているものの、セブは夢を諦めた形です。

これはもうどう感じるか、の世界になってくるのですが、超有名な冒頭のロサンゼルスの大渋滞でのシーンで、夢を追っている若者たちが”大渋滞”していたように、ほとんどの人が叶えることが出来ない夢をお互いに叶えることができた、現実のエンディングのほうがハッピーエンドではないかな、と思っています。

じゃあ、あの回想シーンはなんなの?と考えると、これはデイミアン・チャゼル監督の優しさなのかな、と。(私自身を含めて)多くの人は夢は叶わず、現実的な生活の中での幸せを選びますよね。でも、それだって素敵なハッピーエンドなんですよ、と、あえてどちらとも取れるエンディングにしてあるのかなと思っています。



監督の最新作、「バビロン」は賛否(どっちかっていうと否)の評価になりましたが、「ミッドサマー」のアリアスター監督の「ボーはおそれている」もそうであったように、大ヒットの次作で自由に作れるようになった監督がやりたいようにやって(興行収入的に)コケるパターンはよくある話なので、次回作も期待しています。

エマ・ストーンとライアン・ゴズリングは当時既に有名でしたが、本作の2017年時点では、ライアン・ゴズリングのほうが格上で、エンドロールでも先に表示されます。今は若干エマ・ストーンのほうが格上のような気もしますが、どちらもブレイクして第一線で活躍してることを考えると、まさにラ・ラ・ランドの世界、夢を叶えたんだなーとも思えます。

本作は好きなシーンばかりなのですが、特に好きなのは3つ。

まず、圧巻なのは序盤のミュージカルシーンですね。
ハイウェイの渋滞は、夢を追う若者たちの渋滞であり、そんな中でも笑顔いっぱいで夢を抱いている。そして、終盤のシーンでもう一度渋滞のシーンが繰り返され、夢を叶えたミアは渋滞を降りる事ができるようになっている。本当に良く出来ているなと思います。

次に、ミアが最後のオーディションを受けるシーン。実家に帰ってしまったミアをセブが実家にまで迎えに行き、オーディションに出ないというミアに、『あしたも朝8時に迎えに来るから!』 と言い残しての当日。迎えに行くとやっぱりミアは居ない。。と思いきや、意外にあっさり登場して、『行くわよ!』って車に乗り込むシーンが大好きだし、いつも勇気をもらえます。

そしてラストシーン。ジャズレストランで、ミアが夫と退店する間際にセブの方を振り返り、お互いに少し口元に笑顔を漂わせつつ、眼は涙でいっぱいっていうシーンは、いつ観ても泣けます(っていうか、その前から想像して泣けてる・・)

ということで、またリバイバル上映されたら、必ず観に行こうと思います!!
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