ぬーたん

最愛の子のぬーたんのレビュー・感想・評価

最愛の子(2014年製作の映画)
4.8
いやー、凄い映画観ちゃった。
鳥肌立ったの、久し振り。
実話ベースの中国映画。
ネタバレになるため詳細は書かないが、レビューなどは見ないで予備知識なしで観るのがお勧め。

3歳の子供を誘拐された親が必死に行方を捜すことから始まる。
単純なストーリーかと思いきや、主役が変わり、状況も変わり、
観ているこちら側の心理も変わっていく。
この展開の巧妙さと、それに流されていく自分の感情が、どうにも不思議な感覚である。

カメラがいい。
ストーリーを邪魔する程ではなく、でも感心する位の、ちょうどいい感じのお洒落なアングル。上から斜め上から遠くから、感情と状況に合っている。
電線やネコなどの小物使いも、メッセージ性もあり、その撮り方もいい。
音楽がいい。
感情の揺れや悲しみを表す溢れるような情熱的な音楽、もの静かな音楽と、時に静寂。そのバランスが上手い。
役者がいい。
悲しみとあきらめで抜け殻の。絶対貫くという強い意志を持ち必死の。
皆が皆、そんな風でリアルで、子供への想いがひしひしと伝わり、観ていて気が抜けることがない。

素晴らしいラスト。そこで終われば作品として完璧だったが…。
エンドロールが要らなかったとは思わない。
本人登場は、実話として実感させる説得力がやはりある。
泣けるしね。

子供への無償の愛という主題だけでない。
年間20万人とも言われる子供達が行方不明になっている中国。
経済格差や一人っ子政策など、中国の闇の部分をクローズアップさせた、渾身の社会派作品でもある。勇気ある映画でもある。
監督のピーター・チャン、恐るべし。

『八日目の蝉』『そして父になる』といった邦画にストーリー設定の共通点がある。でも、私は断トツでこの作品が好きだ。
ぬーたん

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