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サウルの息子のRiNのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
3.8
あまりにも辛い映画です。が、それだけではないというか、それだけではなくて、より辛い。

サクッとまとめると、アウシュヴィッツにおいて人々を死に至らしめる役割を、同じくユダヤ人収容者たる人間にやらせていた、という話になるんですが、それだけでもう十分映画にする意義があるし成立すると思うんですが、がですよ。この映画ね、はちゃめちゃにセンスが良い。2015年公開作で話題をかっさらったバードマン、あの種類の、稀有な映像センスから作られているんですよ。まさに収容所に放り込まれる感覚。
主人公に密着し、舐めるようについていくカメラワークと、限りなく現実に近い光源、そして名もなき収容者たちの表情の渦。

やめて。この手の映画は、素直に嫌わせて欲しい。ヤダヤダ怖いって駄々っ子でいさせてほしい。一瞬でも映像美やカメラワークで魅せないでほしい。なんだよ。格好良いな畜生。しかも監督38歳?長編デビュー作の新進気鋭?おいおいおいおい、注目せざるを得ないじゃないですか!才能の塊かよ!
で、映像センスだけならまだしもね、目前の死が前提の世界での、信仰や愛情を切り取った人間ドラマも、抜群に上手い。上手いっていうか辛い。ヒリヒリくる。

ラストシーンの余韻の残し方とかも憎いですよね。観てから話したくなります。わたしはあのシーンのあの表情はこう思うんだけどね、って言いたい。くそー良い映画だなー!
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