アヤネ

顔のないヒトラーたちのアヤネのネタバレレビュー・内容・結末

顔のないヒトラーたち(2014年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

2024年36本目。
なかなか骨太なつくりで見応えあったなぁ。
そもそも、ドイツ国民がアウシュヴィッツをよく知らない時代があったってのがびっくりだった。でも確かに、ナチスを第一党に選んでヒトラーに加担(というと断定的なきつい言い方だけど…)していた世代が当たり前に現役だったら、虐殺という現実に焦点を当てたくない・当てられたくないというのは感情論として理解出来るから、隠そうとするのも必然なのか…。生存者たちの証言で真実を知ったヨハンたちが唖然とする様子に、なんだかこっちまでショックを受けてしまった。
アウシュヴィッツ裁判は存在としては何となく知りつつ、当時の時代性とかわからんから「そうなんだ〜」くらいだったけど、かなりとんでもなく思いきった判断だったんだなってのがこの作品のおかげでよくわかったわ。ほんとすごいことだよ。
なにが罪なのか。なにを知るべきなのか。正義とはなにか。真実とはなにか。
ヨハンが疑問に囚われて思い悩むたび、見てるこちら側も同じ問いかけをされてるような気になった。私たちはなにを知らないのか。なにを知るべきなのか。
知らないならばそれはそれで幸福で、でも知ってしまった以上そこにはもうとどまれない。正義を信じて必死にあがき、一度は諦めながらもまた歩き始めるヨハンの姿が眩しかった。愚直なまでに真っ直ぐで不器用でもある彼の生き方は、きっと近くにいたら「そんなに頑張らなくていいよ…」って言ってやりたくなるんだろうけども、とてもかっこよかったなぁ。
「当時はみなナチだった」「命令に従っただけ」
NTLの「善き人」で、当時のドイツの一市民だった主人公のハルダーが自己正当化の繰り返しで無自覚にナチに染まっていく様が描かれていたけど、その地続きの未来を見たんだなという気もした。同時に、ハルダーは特別ではなく本当に“大勢のうちのひとり”だったんだなってことも身に染みた。私は“そう”なってないかな。大丈夫かな。保証はないけど、なりたくはない。
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