けーはち

イコライザー2のけーはちのレビュー・感想・評価

イコライザー2(2018年製作の映画)
4.1
表の顔は温和な知識人だが、裏の顔は19秒で悪をイコる(動詞)『イコライザー』ことロバート・マッコール。今作は彼にとっての『007 スカイフォール』である。

007ボンドは美女と美酒を愛し高級スーツを身に纏い、作戦とあらば海底や宇宙にも出張する、冷戦が育んだ妄想娯楽超人スパイだ。それはやがて時代に合わなくなりダニエル・クレイグ版でリアル路線に補正、スカイフォールで人間ボンドのリセット、スペクターで原点回帰となる。

本作のマッコールさんも冒頭、回教徒のコスプレをしてオリエント急行でトルコに向かい誰にも悟られず子どもを救うなど荒唐無稽なイコ活動をしたりするが、大枠では正しくスカイフォールにおけるボンドの戦いそのもの(主人公と同じくスパイだった敵、トリガーとなる女上司、最終決戦の場の選択、そこでの大自然、地水火風の洗礼、擬似的な死と新生)である。

もっとも007ボンドは恋も仕事も生涯現役のヒーローとして完全な男の願望を体現、ファンタジー世界に生き続けるのだが、マッコールさんの場合はとうに枯れており、やらかした後悔の存念は彼の人生に残り続け(暗い地の底に潜れば生まれ変われるのは彼ではなく若いマイルスくんである)、どれだけ他人を守る、助けるという行為をやっても、彼のチベットスナギツネみたいな眼は晴れることはなく、海辺の家で妻を思い返しながら修行僧のごとくイコり続けるんだろう、その生命が尽きるまで。でも、そんなマッコールさんがひどく魅力的に思える。人はえてして間違え、後悔し、取り返しがつかないものをいつまでも悔やみ続けるものなのだから……