ぬ

タンジェリンのぬのレビュー・感想・評価

タンジェリン(2015年製作の映画)
4.0
すごい好きな映画だった!
LAに住むトランスジェンダー女性二人の友情ストーリーを軸に、薬の売人、売春婦、移民のタクシードライバーなど、周囲を巻き込んでいく。

特殊なレンズを使ったりしてるけど、映像はすべて3台のiPhone 5sのみで撮影されていてそこが話題だけど、お話としても面白くて好きな映画だった。

親友のアレクサンドラから「あんたの恋人、女と浮気してたのよ」と聞いたシンディが、浮気相手を〆てやる!と殺気を振りまきながら探し回るところから話は始まる。

最初はコメディ要素が強くて、LAに暮らすクィアたちのパーソナルで破天荒な日常をのぞき見ているような面白さがある。
それがストーリーが進むに連れて、彼女たちの生きづらさや、強さや優しさも見えてくる。
自由の国アメリカのはじっこで、クリスマスイブになけなしのお金でひとつのドーナツを分け合う二人、ドラッグと売春で日銭を稼いで食いつながなければ生きられない日常。

主演の二人は監督が撮影場所をリサーチしていたときにLGBTセンターで出会い、そのまま映画出演に至ったらしいのだけど、演技がものすごくうまい。
というより、ローカルな出演者たちの経験から膨らませていったプロットなので、半分ドキュメンタリーのようで、なかなかの緊張感やリアルさ。
(監督のインタビュー面白かったから、気になる方はどうぞ。https://i-d.vice.com/jp/article/43xz3g/sean-baker-film-interview-about-tangerine)

普段スポットライトを浴びることのないローカルな人々の日常を映す、優しくフィルタをかけたような可愛らしい色調が監督の眼差しそのもののように感じる。

だんだんといろいろな人のいろいろなエピソードが絡み合っていく、みたいな話が好きな人は楽しめると思う!!

アジア人女性の営むドーナツ屋さん、ドーナツ・タイムで繰り広げられる地獄絵図のような修羅場のシーンの爆発具合、なんかわからんけど回り回って元気出る。

そういえば、セックスワーカーの女性と孤独なお婆さんの不思議な友情を描いた監督の前作『Starlet』(邦題は「チワワは見ていた」なんだけど、悲しいくらいセンスがない)も割と好きだし、意識せずに新作もクリップしていて、なんか嬉しかった。
この監督の作品もっと観たい!

そんでもってラストすごい好きだな〜。
レンタルするか迷ってたけど、借りてよかった。
ぬ